Imagine

「理想論か、過激思想か、ってところかい」
「神様はいないかも知れませんよ」
少年は実にあっさりと言う。
「カソリックの論議もキリスト教の教えも他の宗教の人たちには無意味です。東洋では無も有もなく、どこでもないところで何かが生まれた、と宇宙開闢の歌にありますから」
「神はないのか」
「そんなものはずっと後です」
「…リッチー君」
「言葉も光も、か」
「恐竜の言葉、僕たちはわかりませんもん」
片手に彼は黒い石を持っている。
「何、それ」
「イングランド北部で発掘されたアンモナイトの化石です。この化石が話していた言葉、僕らにはわからないですよ。億単位の昔には神様はいません。アンモナイトを作ったのは神様じゃありません」
「君は難しい事をいうな」
「ただ、生きていた、それだけですよ。生き物の中で一番バカは人間ですからね」
「認めたくないな」
「無駄に殺し合いは他の生き物はしません」
戦史博物館の壁にあるハルバートに彼は視線を送った。
「僕の致命傷はこれで負わされました」
にこやかに笑って言う。
「これで王冠も名誉も失いました。でも、それってただ生きているだけの他の尊い生物に必要ですか」
「名誉、ね」
「そんなもんのために平和が脅かされて、子供が死に、女が泣くのなら、ゴミ捨て場に捨てますよ、名誉なんて。今の僕ならば」
「リッチー君」
「総裁殿下」
「人は…ずっと愚かなのか」
「ええ、それをこの歌人は歌っただけです。彼の妻はテロリストに踏みにじられた人々がいても、この歌を守り、発信し続けました。彼の妻は空襲で一般市民が虐殺された事を少女のころに見ています。飛行機から爆弾が落ちてきて一般市民が焼き殺されるところを見ています。そんな苦境を知っていながら、彼の妻はこの歌を守った。時の政府は放送禁止にした。でも一般市民は口ずさんだ。この歌を歌った。その意味を理解してください。ご理解いただけないようならば、今すぐ軍務から離れてください」
「君」
「戦死はかっこいいもんじゃありません。名誉なものですか、ただの、犬にも悪いくらいの犬死ですよ」
「その君の強さはどこからきたんだ」
「ここに来てから、母に愛されたからですよ」
満面の笑顔。居並ぶ武器。その合間を二人で歩く。戸口にある婦人が立っている。一瞬、貴婦人にも、いや、前々から貴婦人そのものの、ただ一人の貴婦人と称えられてもおかしくはない少年の養母がいた。優しい微笑。少年が「イマジン」と題された歌を歌う。武器たちの真ん中で。天国も地獄もなく、ただ、存在するだけの世界の、なんという美しさ。みな兄弟、と歌人が称える人々の美しさ、醜さを儀仗杖片手に彼は思う。
「この世界は遠いけれど、人の世界。人は他人がいれば必ず争う悲しい生き物」
カツン、と彼の靴がなった。
「これも軍靴の響き、だな」
戸口で母にじゃれつく少年が振り向いて笑った。

想像してごらん 天国なんて無いんだと
ほら、簡単でしょう?
地面の下に地獄なんて無いし
僕たちの上には ただ空があるだけ
さあ想像してごらん みんなが
ただ今を生きているって…

想像してごらん 国なんて無いんだと
そんなに難しくないでしょう?
殺す理由も死ぬ理由も無く
そして宗教も無い
さあ想像してごらん みんなが
ただ平和に生きているって…

僕のことを夢想家だと言うかもしれないね
でも僕一人じゃないはず
いつかあなたもみんな仲間になって
きっと世界はひとつになるんだ

想像してごらん 何も所有しないって
あなたなら出来ると思うよ
欲張ったり飢えることも無い
人はみんな兄弟なんだって
想像してごらん みんなが
世界を分かち合うんだって…

僕のことを夢想家だと言うかもしれないね
でも僕一人じゃないはず
いつかあなたもみんな仲間になって
そして世界はきっとひとつになるんだ

和訳・参照
http://ai-ze.net/kanrinin/kanrinin5.htm


Webanthcircle
サークル名:みずひきはえいとのっと(URL
執筆者名:つんた

一言アピール
結局、有名な曲にたよっちゃいましたあー。泡盛さん・番外編


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