夢守人黒姫 Love in a mist(3)


「貴方の夢に、お邪魔させてもらう」
 かつて人気子役として一世風靡した過去を持つ少女・藤崎綾乃。舞台への憧れを秘め、退屈で平凡な日々を送る彼女の前に、青い髪の少女・青子が現れた。綾乃はその日から、華々しい舞台の夢を見るようになるが、それは同時に、彼女の心と身体を蝕んでゆく悪夢でもあった。親友が教えてくれたおまじないに助けを求めた綾乃の夢に、巫女服の少女・黒姫が桜の花吹雪と共に現れた――。
 夢の秩序を守る夢守人・黒姫と、悪夢を植え付ける夢魔・青子との戦いと執着を描いた、夢幻想現代ファンタジー。
(サークルサイトより転載)

※この作品の過去の投稿
 夢守人黒姫 Love in a mist
 夢守人黒姫 Love in a mist(2)

sanka

 物語は、悪夢に悩まされる少女綾乃が抱えている苦悩、夢を守る「夢守人」である黒姫と人に悪夢を植え付ける「夢魔」である青子の関係性という二つの軸で展開します。

 綾乃の苦悩は、夢というヴィジュアルを伴うことで、それがどれだけ根深く綾乃を苛んでいるのかがひしひしと伝わってきます。
 そして綾乃の友人・昌子に向ける感情が本当にリアルでドキドキします。
 『超絶変身ユカリオン』の時もそうでしたが、服部さんはとにかく心の動きのリアルさを描くのが上手いなと思います。痛みも、醜い部分も、全てを決して目を逸らすことなく描き出して、けれどその内側にある希望を丁寧にすくいあげるような。
 だからこそ、こちらの胸をぎゅっと締め付けて、自分自身の醜い部分をも暴き出すような、けれど決して苦いだけではなく、爽やかさを感じさせる後味の物語になっているのだろうな、と感じます。

 そしてもう一つの軸である、夢守人・黒姫と夢魔・青子の間に横たわる因縁。
とにかくこの黒姫と青子の関係性がツボでした。
 特に青子の愛が本当に「ねじれた真っ直ぐ」すぎてきゅんきゅんします。
※ねじれた真っ直ぐ→「何か根本的に色々ねじれてるけど、その状態で迷うことなく突き進んでいる様子」を示す。

 黒姫が心から青子を憎んでいるからこそ、青子が黒姫に向ける感情が対比として輝く、そんな風にも見えていました。
 過去のとある出来事を起因とする黒姫の怒りを全て受け止めながら、それすらも喜びに変えていく青子。
 決して理解し合うことのないお互いの心のうちを思うと、なんだかもの悲しくすら感じられます。

 この二人の物語はまだ語られない部分も多く、これから続きそうな感じなので(あとがきでもそう書かれておりました)、是非形になればいいなと片隅から祈っております。


発行:またまたご冗談を!
判型:文庫(A6) 96P
頒布価格:300円
サイト:またまたご冗談を!
レビュワー:青波零也

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