トランスポーター2 ~オペレーションスカイブル- ~


おそらく第一次大戦の前後くらいとおぼしきヨーロッパの架空の国が舞台。
帝政下で鉄道貨物の管理輸送に従事していた、輸送管理官《トランスポーター》の活躍を描く。
革命によって帝政が崩壊して間もない某国。鉄道貨物の管理輸送に従事していた輸送管理官《トランスポーター》のカートは、ある日、厄介な貨物輸送を担当することになる。その貨物とは、革命政府による処刑の手を逃れて亡命を果たそうとする、帝国最後の皇女メリーだった。カートは革命政府の手をかいくぐり、彼女を帝都から脱出させることはできるのか…。

ジャンルとしてはたぶんラノベになると思うのですが、キャラ設定に頼りすぎていないところとか、地の文の素朴なうまさとかがぐっときました。アマチュアの書くラノベはどうしてもセリフだけで展開して、キャラの会話だけで内輪ネタで盛り上がる状態になりがちに思えるのですが、「mistic blue」主宰のみすてーさんの文章にはそういうのがなくて、それでいて懲りすぎてなくて、客観性が貫かれていてかなり読みやすい文章です。
以前の文学フリマで前作にあたる『トランスポーター』を購入し、続きがどうしても読みたくなって購入したのが本書になります。
今回は、皇女メリーを中心に、革命政府に対する旧帝国派の抵抗戦を描く。前回が帝都~郊外の往路なら、今回は郊外~帝都の復路の物語。
鉄道の線路って、まっすぐなはずで、行きと帰りしかないはずなのに、何故か壮大なストーリー展開。手に汗握る展開はまさに映画のようです。そこに様々な登場人物の思惑が絡まりあって、複層的に展開するあたりも手法は実に映画的でおもしろい。
近代ヨーロッパのきな臭い世界観もいい。機関車のすすっぽい臭いや火薬の臭い、そういうのが好きな人にはたまらないと思います。
空間の奥行を感じさせる美麗表紙も必見です。


発行:MisticBlue
判型:A5 60P 
頒布価格:300円
サイト:MisticBlue

レビュワー:唐橋史