2020年11月12日 / 最終更新日時 : 2020年11月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 夢幻泡影の我が身を刻む マットな光沢を放つ樹脂加工されたカバーを外すと、上質な手触りのハードカバーが現れる。表紙の中央に箔押しで印字されたタイトルは『Geneジーン and Memeミーム』。シンプルな題名の下に、刻み込むような手書き文字があ […]
2020年11月12日 / 最終更新日時 : 2020年11月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 闇の巡礼者 息子よ、お前は私がこのような手紙と古書を旅先からわざわざ送ることを奇妙に思うだろう。しかし、私は何としても故郷に持ち帰らなければならない物を手に入れたのだ。これをお前に届けなければならない。そして今の私はまた、己の生命 […]
2020年11月11日 / 最終更新日時 : 2020年11月10日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 サンタクロースへ愛を込めて 拝啓サンタクロース様はじめまして。クリスマスの日に、あなたが世界中にプレゼントを配っていらっしゃると聞き、お手紙いたしました。 お恥ずかしいのですが、実はわたしは子供と呼べる年ではありません。人間でもありません。見た目は […]
2020年11月11日 / 最終更新日時 : 2020年11月10日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 夕食或いは忘却まであと少し 庭に吹いた黄昏の風は夏の残滓ざんしを孕はらんでいた。 台所を出た青年は長く息を吐いて、庭を一心に掘っている弟へ声をかける。「まだやってたのか。……もう見つからねえって。諦めろよ」「あともう少し」「それ、さっきも聞いた」 […]
2020年11月11日 / 最終更新日時 : 2020年11月10日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ぺんぎんは時をかける ―あなたは誰かからもらった手紙を読んで思わず涙したことはありますか。 今時どこででもインターネットが使えるわけですから、わざわざペンを持つことなんて重要な書類くらいです。手間をかけて書く必要はもうないのかもしれません。 […]
2020年11月10日 / 最終更新日時 : 2020年11月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 返事 夕方に外出先から帰ると、階段横のステンレスの郵便受けに手紙が混じって入っていた。このIT革命の時代に、郵便受けに来る書簡と言えば大体は手続き関係の書類かダイレクトメールである。無粋なそれらの書簡の中に、薄緑色の地に竹笹 […]
2020年11月10日 / 最終更新日時 : 2020年11月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 花便り 御影石で造られた石塔へ、水を掬った柄杓を傾けて埃を落として布たわしで磨く。 合同墓所に備え付けの水場は冷水だけが汲み上げられるため、各々の墓所では手の暖を取りながら交代で掃除をする者や、持参してきた湯で清掃するものが多 […]
2020年11月10日 / 最終更新日時 : 2020年11月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 奔流に溶ける 「仕事ですか?」 普段は家に閉じ篭って小説ばかり書いている友人が、珍しく私の家までやってきた。 執務机に向き合う私は一拍遅れて、書斎に入ってきた友人を見上げる。家人が彼を招いてここまで案内してくれたのだろうが、傍で声をか […]
2020年11月9日 / 最終更新日時 : 2020年11月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 投函 「人間は不幸なもんだな」からかうように声をかけると脳筋が顔を蹙めた。 「何それ」 「文明を発展させた結果惚れた腫れたなんて不確実なものでしか関係性を広げられなくなった上に、そのベースになる自分の気持ちさえも信じることがで […]
2020年11月9日 / 最終更新日時 : 2020年11月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 一葉奇談 京の名物といえば神社仏閣に舞妓はん、ついでに生八ツ橋、というのが外から見たもので、地元の人なら学生と言うかもしれない。私はそれに古書店も付け加えたい。一時、新刊書店を脅かしたブで始まるチェーン店ではない、個人経営の古色 […]