2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 前略、額の中より その絵には《恋文を読む女》の題がつけられていた。 一糸まとわぬ姿でソファに横たわる女が片手に便箋を持ち、気だるげにそれを眺めている。シンプルな構図と控えめな色彩が小さなカンバスに収まった一枚は、壁に並ぶ作品群の中では間 […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 双花&ばけのあわあわアワー!~不思議編~ 『風の噂に聞いたんですけど…』何日目かの車中泊の夜、同乗者を寝かしつけて自分も目を閉じたら、突然知らない声が車内に響いた。驚いて振り向くと、後ろの荷台に積んでいた非常用ラジオがいつの間にか起動し、どこかの番組を流していた […]
2019年8月22日 / 最終更新日時 : 2019年8月21日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 back to back 山間の小さな集落の、たった一軒しかない飲食店に、一日の仕事を終えた大人たちが集まっていた。休日を控えた土曜の夕方はいつも、地元住民と工事関係者で満席だった。 酒の肴はシンプルな料理と盛んなおしゃべり。耳をすませば愚痴ば […]
2019年2月7日 / 最終更新日時 : 2019年2月6日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 ノーリーズン 二〇〇X年九月初旬。 残暑厳しい東京郊外のある大学病院に奇妙な患者が入院した。 「ほら、あれよ」 病室の前で看護師たちがささやいた。その声は三人部屋の中にも当然聞こえていて、廊下側のベッドに横たわる老人がわざとらし […]
2017年8月28日 / 最終更新日時 : 2017年8月27日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 きょうの収穫 熟した果実のような色のランタンが並ぶ大通りは収穫祭ならではの熱気に満ちて、行き交う子供も大人も例外なく浮かれた顔をしている。甘い匂いに誘われ、色鮮やかなお菓子の店を見つけた藍が走り出した。彼女を追う私もつい口元が緩む。今 […]
2016年9月6日 / 最終更新日時 : 2016年9月5日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 旅立つ前に 誰も何事も最初は等しく「未経験」だ。 それは現世とも物質界とも呼ばれる領域に限らず、ここ冥府でも同じ。しばしば忘れがちという点も同じ。だから冥府の職員教育マニュアルでは、新人に何かを初めて任せる際の注意点にいくらかペ […]