2017年1月25日 / 最終更新日時 : 2017年1月24日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 刺青 もう二十年も前のこと、ジェラベルドがシノに出会ったのは、赤竜せきりゅう討伐団の入団試験だった。 当時のジェラベルドは、剣ひとつで貧しい親きょうだいを養おうとする二十歳の若者だった。すでに筋骨たくましい大男だったが、顔 […]
2017年1月24日 / 最終更新日時 : 2017年1月24日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 偽りを重ねて明日を望む 「こんな寒い中、遠路はるばるご苦労なことですね。宮内庁の管理職ともあろうお方が、私のような者の所へ御足労痛み入ります。しかし生憎ですが、ご希望にお応えすることは出来ませんよ」 雪の降り積む深山幽谷を訪れた駒場こまばに、 […]
2017年1月24日 / 最終更新日時 : 2017年1月23日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 僕は嘘の多い人生を送っとうからね 「僕は嘘の多い人生を送っとうからね」 これがサイジョーの口癖だ。刻む文章の秀逸さは語るまでもなく、唇から発せられる戯作のエッセンスは至宝の雫と呼ぶにふさわしく。それでいて飾らず無邪気によく笑い、ときには醜態を晒す――俺 […]
2017年1月24日 / 最終更新日時 : 2017年1月23日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 lie,lie,lie いちから十まで洗いざらい正直に話すことがいつだって正しい答えじゃないことくらい分かり切っている、それにしたって。 安居酒屋の狭苦しい個室の中、ネオンできらめくにぎにぎしい街並みは今日もまた、星空をかき消すように無機質 […]
2017年1月23日 / 最終更新日時 : 2017年1月22日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 花葬 「花のね、露を飲むのです」 そう言って彼女は胸に手を当てて、にっこりと微笑んだ。 「露を……」 「ええ。薔薇の花弁のふちに溜まった、朝露を毎朝ひと口ずつ。それだけですわ。他には何も口にしませんの」 「それだけであなたは […]
2017年1月23日 / 最終更新日時 : 2017年1月22日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 Doubt -付箋- ゲン担ぎを信じるだろうか。私は信じている。 私、リズことエリザベス=リードには「勝負!」という日の特別なルーティンがある。 朝、住居のアパートメントの一階にあるカフェでお気に入りの甘い珈琲をいだたくこと。 エスプ […]
2017年1月23日 / 最終更新日時 : 2017年1月22日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 とある商人とイカサマ劇 日没を報せる鐘が街に鳴り響き、人気の殆どない裏通りのとある一画に男達がぞくぞくと集まってくる。彼らは一様に頭から頭巾といったものを被っており、その表情を一切窺い知ることはできない。 そんな彼らが次々と入っていく建物を […]
2017年1月22日 / 最終更新日時 : 2017年1月21日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 ゆめのむすめ 男 さらさらと髪を撫でる音で目をさました。ああ、また眠っていたのだ。――――後悔と羞恥におそわれて寝たふりをつづけようと目をとじたままでいると、かれの指が耳殻のピアスにふれる。これも、いつかのみやげだ。 世界の […]
2017年1月22日 / 最終更新日時 : 2017年1月20日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 飛ぶ蟹 サワガニにかんしては騙された。海から十分ほど歩いた山のうえに父の別荘があり、海水浴のあとは水着のまま坂をのぼった。小二の夏だったと思う。父と手をつないで歩いていて、側溝に蟹がうずくまっているのを見つけた。青白い小さな蟹 […]
2017年1月21日 / 最終更新日時 : 2017年1月20日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 造られた通交 彼は、井戸茶碗に湯を注ぎ馴れた手つきで茶を点てた。 「どうぞ」 茶を勧める動作も完璧である。だが、その服装は日本のものではない。漢陽某所で主一人、客一人の茶席が行なわれている。 「倭国では、密談をする際はこのようにす […]