2017年8月4日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 花の中の花 ―虫除けまじない― 式典の後夜祭。広場へと続く大通りには多種多彩な天幕が張られ、屋台が並ぶ。 この道は、広場中央にある円台と櫓へと続いている。松明がそのシルエットを浮かび上がらせていた。この場所が使われるのは日暮れ後、今は静かに出番を待 […]
2017年8月4日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 三.二秒のブランク 三.二秒のブランク 移民五周年を祝ってはどうか。 声はどこからともなく上がってきた。つまり、相当数の意見ということだ。 「まだ『移民』なんて状態には程遠いのにね」 『向こうは喜ぶんじゃないか。こっちでも何かしようって […]
2017年8月4日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 奇祭「スリッパ祭」 午後六時、今年もようやく訪れた。 今日を迎えるまで一年がとてつもなく長いと感じていた。 我が社には「スリッパ祭」という会社主催の祭がある。 会社負担で無礼講でビールを飲みながら社員たちが業務用スリッパで叩き合う変 […]
2017年8月3日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 祭りも毎日繰り返せば日常になるんだよね、と彼女は言った 戦いの中に身を置くのは好きだ。全身の血が湧き上がるような、原始的な祭りの中にいるような高揚感は、麻薬のようにリサの生命をむしばむ。分かっていても止められないところが、まさしく麻薬的なのだと思っている。 中央省庁区。貴 […]
2017年8月3日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 かもしびと ツノある者が笑いかけてきた。 霜月もあと十日で終わるという日曜のことだ。それはとても晴れた日で、セーターの上にチェスターコートの出で立ちでは、汗ばむほどだった。 普段は乗らない方面の黄色い電車に揺られ、駅から十五分 […]
2017年8月3日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 例えば背伸びの赤ネイル 先輩、と呼ばれながらすれ違い様に袖をつかまれて、驚いて振り返った。 それはよく知っている女の子だった。今年の春まで同じ中学校に通っていた、一つ下の学年の子。卒業式に少し話をして以来だから、彼女の顔を見るのは約半年ぶり […]
2017年8月2日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 ハロウィーン祭の当日 巨大なジャックオランタンが、縦横無尽に浮遊しながら来校者を歓迎する何とも怪しい校門をくぐれば、私はたちまち魔法学園のハロウィーン祭の参加者となる。 私が住んでいる町からそう遠くはない丘の上に建つ魔法学園は、魔法が外に流出 […]
2017年8月2日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 第一王子の企み 「俺も星闘祭に出たい」 「……は?」 春の初めの、麗らかな昼下がり。中庭東屋にて。 唐突に飛んできた言葉に対して、フラットがやっと返せたのはそんな間抜けな一音で、そこに込められた様々な意味を伝えきれずあっという間に春 […]
2017年8月2日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 炎に宿す魂の祈り 辺りが少しずつ暗くなる中、火が灯っていないランタンを片手に、亜麻色の髪を首もとで結った少女は町の郊外に向かっていた。少女以外にもランタンを手にして石畳の上を歩いている人が多数いる。子どもから老人まで年代は様々、男女比は […]
2017年8月1日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 『暁天の双星』序文 ターミ・ポアットによる回想 あの空は作りものだったのではないかといまでも思っている。銀杏いちょうの濃い黄色にも負けず、鮮やかでわざとらしい青だった。三十年近く経っても、あの空は瞼の裏に焼きついたままだ。 私が十歳のとき、同じ小学校に通う子ども全 […]