2018年6月4日 / 最終更新日時 : 2018年6月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 汀にて 海の中は普段とはまったくちがう様相で渦巻いていた。 物心付く前から海で泳いでいた辰三たつみだが、荒れ狂う海に飲まれたことはない。 もがいても、いったいどこに海面があるのかさえ分からない。海水で目がしみて、すぐに息が […]
2018年6月4日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 晴れの海から ギリギリまで光量を絞ったランプが、俺の足元をぼんやりと揺らめかせる。 頼りなく揺れる光と、しん、と静まり返った通路。 普段は人通りも多くて子供の声がひっきりなしに聞こえるエリアだから、不思議な気分になる。 例えば […]
2018年6月4日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 月のない夜 これは、この広い世界のどこかで起きていたかもしれない、ある国々の人々の物語である。 *** その夜、王女は運命から逃げ出した。 「マリーナ様、今晩も調子が優れませんか?」 ベッドに横たわる王女に、傍らの椅子に […]
2018年6月3日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 本当は良いエビなんて存在しない インディーズバンドにはまっているなんてサブカルクソ女って陰口叩かれそうだからみんなには言わないけれど。 いつも演技をしている。みんなそうしている、私だけじゃない。SNSにいる違う名前の私が嘘偽りのない私だと言える。だから […]
2018年6月3日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海に投げ入れられるのは誰か 今年の夏は、一人旅行だと決めていた。八月の下旬、俺は船で離島へ向かった。夜七時の最終便に乗る人の姿はまばらだ。乗った時は出ていた夕日が沈み、そのうちに辺りが暗くなった。甲板に出ると、月と星の明かりが町中で見るより煌々と […]
2018年6月3日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 すべてがかえるうみ C[29] H[18] S[56] もう何年も前から使っている古いアパートの一室。 基盤、筐体きょうたい、ケーブル、その他の資料やごみの山。自分でも把握していないものがどこかに埋まっている。夕暮れどき、小さな窓のカー […]
2018年6月2日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 星の海 遠い願い 幼い頃、プラネタリウムに住んでいた。 なぜそこに自分が住み着くことになったのか、詳しいことは覚えていない。 天魔に襲われ壊滅した集落から、救出に来た賞金稼ぎによって救いだされ、『シリイ』という名前をもらった。愚かな […]
2018年6月2日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海の日 今日は海の日。祝日だ。 とある町の歓楽街。飲み屋通りは夜が更けても賑わっている。 二人の男性がテーブルで向かい合わせに飲んでいる。大分出来上がっているようだ。 「しかし三連休は早いな。イベントも終わって、もう明日から世間 […]
2018年6月2日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 遙かなる、その先へ 海があった。 ずっとずっと昔から、海があった。 島があった。 ずっとずっと昔から、島があった。 海と島には、人の営みがあった。 ずっと昔から、人々は営みを続けていた。 海と島からの恵みを受けて。 足りぬ事 […]
2018年6月1日 / 最終更新日時 : 2018年5月31日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 魔法薬剤師の処方箋 「ケース雨女」 「こちら問診票です。質問項目が細かいですが詳しく書いてください」 僕は新規のお客様に問診票とペンを手渡す。 ここは魔法薬店。僕はこの店の経営者兼薬剤師のアニー=クロッカス。従業員を雇っている余裕などないので、店のこと […]