2018年6月7日 / 最終更新日時 : 2018年6月6日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 いつかまた君と、ここで 見上げれば青い空。視線を下げると水平線が横に長く伸びている。海は空よりも青い。 さらに視線を下げると、海岸線が見えた。白い砂浜ではなく、洗濯板のような岩が広がっている。 「『鬼の洗濯板』と呼ばれてたらしいよ」 篤志 […]
2018年6月6日 / 最終更新日時 : 2018年6月5日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 暗き波間から見上げるひかり ――ああ、月が出ているな。 夜空を穿つ青白い真円と散りばめられた星々。零れた独白はその美しさへの感嘆などではない。月の高さと星の位置から、意識を失っていた時間が僅かであったこと、元いた場所から流されていることを把握する […]
2018年6月6日 / 最終更新日時 : 2018年6月5日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 ちゃんと笑える時まで お出掛けの服を選ぶのは、私にとっては大仕事だ。スカートは制服以外だとまだ少し慣れない。その代わり、買ったばかりのレースのトップスを着ることにした。ひらひらとフリルのついた女の子らしい服、しかも淡いピンク色。まだ新しいリ […]
2018年6月6日 / 最終更新日時 : 2018年6月5日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 朽ちた人魚姫 失恋を、した。 自分でもあまり実感というものは湧いていない。ただ、お腹の中に大きな氷の塊を埋め込んだように重い。重くて、冷たくて、全てを吐き出してしまいたい。 叶わぬ恋だとはわかっていたのだ。 学校で一番の美男子に恋をし […]
2018年6月6日 / 最終更新日時 : 2018年6月5日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 喫茶かもめ 喫茶かもめ。海辺の街にありがちな名前のこの店には、特別なメニューなどなにもない。 コーヒーとカフェオレ、紅茶にはレモンとミルクのどちらかを。とびきり美味しいこともなく、特別まずいわけでもない。一息入れた客たちが一歩外 […]
2018年6月5日 / 最終更新日時 : 2018年6月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 Now Loading Now Loading…… 海と緑と芸術のまち鴉原。 これはここ鴉原市の合い言葉のようなフレーズですが、これよりご覧いただくのはまさにこの言葉の通りの風景でございます。 右手には穏やかな鴉原港、左手奥には東西に連な […]
2018年6月5日 / 最終更新日時 : 2018年6月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海辺にて 「彼女が初恋の君、か」 僕はからかうように言った。 「葵は大切な友人だよ」 そうは言ったが、彼女を見つめる視線は優しい。 「深山さぁん、松浦さぁん、一緒に泳ぎませんかー?」 深山は重い腰を上げる。 「お呼びだ」 「 […]
2018年6月5日 / 最終更新日時 : 2018年6月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 いつか、約束の海へ 折り鶴を大量生産するのをやめてからも、サトルが一之江と落ち合うのは決まって中等部の美術室だった。他の教科の宿題とか学習塾の課題とか、おおよそ美術とほど遠いことをやっていても、美術教師は咎めない。やぶ蛇になりたくないので […]
2018年6月5日 / 最終更新日時 : 2018年6月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 サーモとカティ 生前、伯父は庭に缶詰を埋めておいたという。庭といってもマンションの共用庭だ。防災グッズのつもりだったのよと伯母は言った。伯父が亡くなったのはもう何年も前で、伯母は缶詰のことをすっかり忘れていたらしい。掘り返してみること […]
2018年6月4日 / 最終更新日時 : 2018年6月4日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 星の雫の落ちる日は 星の雫の落ちる日は、数年に一度の大きな祭です。とりわけこの国の首都であるカント城市には、ほうぼうの街や村からたくさんの人たちが集まってきてはめいめいに、地域特産のマツナの花の砂糖漬や銀針草の塩もみ茶やクルクル鳥の燻製や […]