2018年6月1日 / 最終更新日時 : 2018年5月31日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海の上より、空の向こうの友人へ 『佐倉柚歩さくらゆずほです。ご無沙汰しています。ドラゴンに襲われましたが、なんとか生きています』 遠く離れた親友からのメールは、そんな書き出しから始まっていました。 * 「あ、きりちゃん、さきちゃん、やっほー!」 惑 […]
2018年6月1日 / 最終更新日時 : 2018年5月31日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 葬送 ーワスレナグサー しん……とした空気の中、ふわりと少女の黒髪が風に揺れる。夜の帳に包まれた世界。この世は少女たった一人なんじゃないかと錯覚を起こしそうなくらいの静寂の中で、少女はゆっくりと地面を踏みしめる。さらりとした砂の感触が心地いい […]
2018年6月1日 / 最終更新日時 : 2018年5月31日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 炉心遊海 僕の知る限り、椎名は活発な女の子であった。 海辺に佇むサナトリウムに向かいながら、昔の事を思い返す。 この星見海岸では近くに存在する高校の伝統的なイベントとして、光流しという行事が行われる。高校最後の夏休み前に、将 […]
2018年5月31日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 瑠璃色の夢 「瑠璃の目は、ホンマに綺麗な色やね」 そう言って微笑む母を、涙をこらえて見つめる。 今日の夜には、彼女を見送らなければならないのだと思うと、瑠璃の胸は締め付けられるようだった。 花街の裏路地。藤胡蝶の店。 「前の色も綺麗 […]
2018年5月31日 / 最終更新日時 : 2018年6月1日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 凪の海 ―1― 自分たちを狂わせるのは、たぶん、あの目だ。 無防備にこちらを覗きこんでくる、あの黒い目だ。 初めて会ったのは、“祭”の日の夜。 あえて居眠りを決めこんでいた彼に、“主”からお呼びがかかった。 普段 […]
2018年5月31日 / 最終更新日時 : 2018年5月29日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 うたかたに消える 父は、珍しいものが好きだった。その収集品は、古今東西、国内を問わず、遠い海の向こうの国にまで及んだ。 中でも、その日、父が新しく手に入れた珍品に少年は目を奪われた。薄暗い蔵の中、水を張った大きな盥に腰を下ろすのは、十 […]
2018年5月31日 / 最終更新日時 : 2018年5月31日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 セパレイト・ブルー ~人魚と天女~ 濡れ髪に優しく風が過ぎ行きて人魚と天女に出会いありけり 海に背を向けて前屈をしたら、両足の向こうにふたつの青とその境目が逆さに見えた。 ああ、水平線って天平線だ。 すごくすごく遠いはずの、海と空とが寄り添っていた。 […]
2018年5月30日 / 最終更新日時 : 2018年5月29日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海のばかやろー 浜辺の楽しげな雰囲気から遠ざかるように歩くと、波の音は、私と喧騒とを切り離した。 でたらめに走った後なせいか足取りがおぼつかない。スニーカーの中に砂が好き放題入り込んでいる。いい加減歩くのも嫌になって、私は砂浜の手頃 […]
2018年5月30日 / 最終更新日時 : 2018年5月29日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 いつか、世界の果てで 潮騒が響く砂浜は、視界の半分以上を占めていました。 かつて私が住んでいた湖も風によって波立つことはありましたが、これほど絶え間なく、波飛沫の音が空まで鳴り響くことはありませんでした。 森に住んでいた頃。 私は山ブ […]
2018年5月30日 / 最終更新日時 : 2018年5月28日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 波をきけ 崙国・柳王朝が終焉のときをむかえたとき、楽ガクは、丘の上から海を見ていた。風が強い日だった。波は白くしぶきをあげ、船を出している漁師はひとりも、いなかった。 「……これからが大変でございましょうよ、若き皇帝は」 新た […]