2020年12月15日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 筆不精 真っ白な紙を前に鉛筆を握ったまま固まる俺。――何を書けばいいんだ? 頭の中で彼女の事を思い浮かべ、彼女が好んでくれるような文章を探してみるが、なかなか見つからない。とりあえず彼女をイメージするような言葉を書き出した。 […]
2020年12月15日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 秋晴れの空 ある晴れた秋の日のお昼前、歯医者から帰宅した吾郎さんは郵便受けを開けた。ーー思ったより長いことかかったし腹減ったなあ。お昼は何にしよか。冷やご飯が一膳分ほど残っとったから、ネギと卵で焼き飯にでもしよかいな。 そんなことを […]
2020年12月14日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 あなたに無事に届きますように 色とりどりの便箋や封筒を前に、もう一時間は悩んでいる。季節に合わせるならば、雪景色を連想させる淡青色など綺麗だろうか。いや、箔押しされた、この群青色の便箋だって美しい。煌く気持ちを表すならば、夕焼け色だって候補だろうな […]
2020年12月14日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 真っ赤なハートがふさわしい 昇降口の軒下に吹き込む落ち葉が外灯に照らし出されると同時に、ドアが音を立てて揺れてすきま風が入り込んでくる。ようやく部活の汗が引いてきたところの私は、足下から這い上がる冷気に小さく悲鳴を上げた。 そろそろコートが必要な […]
2020年12月14日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 灰の鳥 久しぶりに部屋の掃除をしようとあなたが思い立ったことに、筋の通った理由なんてなかった。昔からあなたは、どこからそんな発想が出てくるのかと問い詰めたくなるような意味不明な思いつきを口にしては実行し、私たちを困らせてばかり […]
2020年12月14日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 彼女との日々、そして消息 正月明けに舞い込んだ、1枚の年賀状。 ありふれた写真付き結婚報告の裏面に、見覚えのある筆跡──丁寧な、けれどほんの少し丸っこい文字。『元気ですか』 その一言を書くのに、彼女は何を思っただろう。 少なくとも自分は、耳によ […]
2020年12月13日 / 最終更新日時 : 2020年12月12日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 あの子なりの実践的過去改変理論 「涼夏すずか、マリちゃんのお引っ越しって今日よね」 テーブルの向かいに座るスーツ姿のお母さんが、テレビの画面を横目で眺めながら少し眠そうに言う。トーストの最後の一欠片をつまもうとしていたわたしの指先が、一瞬だけ動きを止め […]
2020年12月13日 / 最終更新日時 : 2020年12月13日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 拝啓 大好きだったあなたへ 「分かった。じゃあ私、元カノさんに手紙書く。だから、ハルも書いてみなよ」「……えー、なんで」「なんでも何もないでしょ。ハルがずっとそうやって引きずってると、私もどうにもならなくなっちゃうの」「そりゃ……そうだけどさ」「分 […]
2020年12月13日 / 最終更新日時 : 2020年12月12日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 スルタンの台所 新米が入ってくるのは毎年のことであったが、とりわけ印象深い後輩がやって来たのは、ハサンが三十路になる少し前の話だった。 まだあどけなさの残る可愛らしい顔立ちと、そんな顔立ちに見合わぬ頑健な身体をした、少年と青年の中間ぐ […]
2020年12月12日 / 最終更新日時 : 2020年12月10日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 扇動ジャーナリストの虚構レポート 扇動ジャーナリストの虚構レポート 歴史的な出来事を報じられるとあって、編集部は色めきたっていた。「やっと、本物のお言葉を載せられるな……」 ヒゲを蓄えた編集長の男がエリシオの肩に手を乗せながら、小声で呟いた。「……匿名 […]