2020年12月17日 / 最終更新日時 : 2020年12月17日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 親愛なる我が友へ こんな風に手紙を書くだなんて、なんだか恥ずかしいわ。 でも、思いきって書くことにしました。 ――ねぇフラウ、覚えている? 私は今、あなたと初めて出会った、タナソルの街へ来ているの。あの時は年に一度の星祭りで賑わっていた […]
2020年12月17日 / 最終更新日時 : 2020年12月17日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 この手紙は100%私でできています。 「こうしてあなたに手紙を書くのは初めてでしょうか。いえ、厳密には書いてはいないのです。私は手紙を作っただけですから。そもそも今まで毎日顔を合わせている相手に手紙を出す必要なんて発想はありませんでしたし、あまりあなたは文章 […]
2020年12月17日 / 最終更新日時 : 2020年12月18日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 フライドエンジェル 飼育小屋の鶏を首ちょんぱしているところを担任から咎とがめられたマサヲは、その結果クラスでいじめにあった。 いじめられている事実を両親に相談するなど小学生三年生のプライドが許さず、マサヲは善信おじさんの家に行って相談する […]
2020年12月17日 / 最終更新日時 : 2020年12月16日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 猫 ニャーン ベッドの下で私を呼ぶ声がする。「なぁに? 九郎さん」 布団から頭だけ出してベッドの縁に寄ると、彼はこちらを見上げて、構って欲しそうに鳴いた。 ニャ、「お腹空いたの?」 ニャ、「お布団入りたいの?」 ニャ、 構 […]
2020年12月16日 / 最終更新日時 : 2020年12月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 われはいもおもふ 「留守を頼みます」「お任せください、どうかよい夢を」 男爵は女王の額にそっと、しかし名残惜しさを感じさせる程には長く口づけをした。 精進潔斎を済ませた女王は毅然とした表情でひとり橋を渡り、冷たい穴蔵の奥へと消えていった。 […]
2020年12月16日 / 最終更新日時 : 2020年12月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 読めない手紙 これは湖に死体が沈む前のはなし。 ルカ・ストルキオ少年は父の仕事の手伝いで、森に点在するシギやライチョウの巣を探し回っていた。抱卵している鳥の数を把握するためである。同時に害獣の痕跡がないかどうかも注意深く観察する。 […]
2020年12月16日 / 最終更新日時 : 2020年12月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 あなたさまへ あなたさまへ 今日は美知が歩きました。 ややこだった頃には、寝返りを打つのも大変そうで、この子は本当に大きくなるのかしらと心配したものですが。 実のところ、肝が冷えました。縁側に這っていって、外に転落するという事故が起き […]
2020年12月16日 / 最終更新日時 : 2020年12月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 大学生とラブレター 「動くな」 穏やかな昼下がり、大学ゼミ室で卒論の資料を検索していた俺の背中に、固いものが触れる。 振り返ることは、できない。この固さを俺は知っている。この――冷たい金属の感触を。「ゆっくり両手を挙げろ。いいか、変な気を起 […]
2020年12月15日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 受け取ったもの ふと視線を上げる。デスクに置いた時計が目に入った。二十三時五十七分。もうこんな時間かと、玉坂虎之丞たまざかとらのじょうは息を吐いた。自室も、ドアの向こうも、しんと静まり返っている。家族は既に寝ているようだった。 睨めっ […]
2020年12月15日 / 最終更新日時 : 2020年12月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 拝啓、明智殿へ 拝啓、明智殿へ 拝啓、十兵衛(光秀)へ。 お元気にされていますか、前右府(信長)です。私はいま三途の川のほとりに居ます。どうして私がこんな所にいるのかは、御存じかと思います。本能寺が囲まれた時は、てっきり息子(信忠 […]