2019年1月17日 / 最終更新日時 : 2019年1月16日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花願いの創造 「こんなものいらないわ!」 食堂の一角で、二十代半ばの女性が甲高い声をあげつつ、花束を床に叩きつける。 彼女の前にいた男は一瞬呆然としていたが、我に戻ると体を震わせ、顔を赤くしていった。そして机を叩いて立ち上がる。 […]
2019年1月16日 / 最終更新日時 : 2019年1月15日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 ラフレシアの家 地下鉄の駅を降りて、閑静な住宅街を十分ほど歩いた角にリナちゃんの家はある。 正確には、角を曲がるまでは隣の家とほとんど繋がった造りの塀で、角を曲がった向こうに玄関があり、そこからがリナちゃんの家だ。でも、曲がるどころ […]
2019年1月16日 / 最終更新日時 : 2019年1月15日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花になれない私のスープ わたしの知っているそのひとは、花のような女のひと。 転職をした最初の日に上司が、年の近い同性の先輩だから頼りにするようにと、わたしに引き会わせたのが、彼女だった。 少し低い声でわたしに語りかけるそのひとと、親しくな […]
2019年1月16日 / 最終更新日時 : 2019年1月15日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 瀕死の探偵 「満潮音みしおね。起きてるか」 門馬知恵蔵は一瞬、眩しさに目を細めた。 隅から隅まで純白の病室。横になっている満潮音純の寝間着までもだ。 弱々しい声が応える。 「意識はあるよ。話もできる」 年齢を超越した美貌が、 […]
2019年1月15日 / 最終更新日時 : 2019年1月15日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 歳の数だけ薔薇の花より 春も終わりに近づいた、とある一日のこと。 夜の帳が降り、暗くなった窓の外を眺めながら、ソファにかけたエレは、若草色の瞳を憂いに曇らせて、今夜何度目かわからない溜息を零した。 先だっての冬、元セァク皇国の姫であるエレ […]
2019年1月15日 / 最終更新日時 : 2019年1月15日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 拳銃と花束 パンを抱え、ため息をついていた。 海は地獄だと聞いていた。まさかこんなに、船の仕事が大変だったなんて。 貧しい家のために、次男のぼくが海に出るしかない、船で働くしかないと覚悟していた。荷物運びなど、初めは積極的に働 […]
2019年1月15日 / 最終更新日時 : 2019年1月14日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 灯花祭 「祭りの日くらい外に出てみたら? 濃霧に加えてあの人出なんだから、あんたに目を留める奴もいないでしょ。どう?」 ――という彼女からの誘いを『ヤドリギ』は承諾した。というより、黙っていたら勝手に承諾とみなされた。いつもの […]
2019年1月14日 / 最終更新日時 : 2019年1月14日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 Outsiders 艦内放送サキ専用チャンネルでアニメ動画を見ていると『お父さん』から、搭載シャトルが戻ってきたという知らせが入る。 「ハラさんが帰ってきた!」 サキは動画を止めて、ガシャンガシャンと足音を立て、外壁沿いの通路に向った。 […]
2019年1月14日 / 最終更新日時 : 2019年1月14日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 金鯱くん へにゃぽちゃんの机にはサボテンのひとがいます。「金鯱」というおなまえです。世の中にはいろいろなサボテンの方がいらっしゃいますが、それぞれかっこいい名前がついているのです。金鯱くんはみたらしだんごくらいの大きさの、ちっこ […]
2019年1月13日 / 最終更新日時 : 2019年1月13日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 フォーチューン・フラワーのメッセージ 『テンジクアオイ』が、ゼラニウムという花の和名だと隼はやとが知ったのは、中学二年のとき。 当時の文通相手の名が「てんじく あおい」だったのがきっかけだ。 名前の漢字もやりとりの内容も、今となってはよく覚えてはいない。 […]