2019年1月21日 / 最終更新日時 : 2019年1月21日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 愛の花は橙に染まる 朝。小気味いい音とと共にカーテンが開けられ、部屋に明るい陽が差し込む。その眩しさに、閉じていた目を更にギュッと閉じて、リーナは掛け布団を頭まで引き上げる。 「お嬢様、朝ですよ。起きてください」 そんなリーナの姿に小さ […]
2019年1月20日 / 最終更新日時 : 2019年1月19日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 模造の花は贈れない 「博士Dr.、見て欲しいものがある」 モニターの隣に設置したスピーカーから流れる合成音声に、白衣の背中が僅かに傾ぐ。 「どうした、七号エプタ」 博士と呼ばれた気怠げな風貌の女性は、耳元の高さで外側に跳ねているショートヘア […]
2019年1月20日 / 最終更新日時 : 2019年1月19日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 身から出た花 その絵を見て、思わず息を呑んだ。 暗闇の中に浮かび上がる白い女性の身体。その胸からは顔よりも大きな白い花が咲いている。身体中に根が張り、唇からは褪せた色の細長い葉が覗いていた。 その絵は確かに、写真では写しきれない […]
2019年1月19日 / 最終更新日時 : 2019年1月19日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 偲びの花 あなたにとって特別な日、結婚式の朝がきた。 その前夜、征太は一睡もできなかった。 まんじりともせず暗闇の午前二時、彼は隣で寝息を立てている妻の佳奈子にそっと唇を寄せてみたが、気づいた彼女が譫言のような声で呻いた。 […]
2019年1月19日 / 最終更新日時 : 2019年1月19日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 綺麗な花の使い方 「こんな大荷物抱えて、一体何やってんのかね……」 一級河川をまたぐコンクリート橋の歩道の真ん中。独り呟いた私は、スーツケースを傍らに止めると、背中のリュックサックをアスファルトの地面に下ろした。荷物を全て道の端に寄せ、 […]
2019年1月18日 / 最終更新日時 : 2019年1月17日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 Gardenia 人を撃ち抜いて血液が飛び散る様は、蕾が花開く瞬間に似ている。すぐに枯れてしんでしまうけれど。散った命をどこかで誰かが悲しむと思うと、心に沁みる美しさだ。死んでも誰も悲しまない雑草くそ野郎かもしれないけど、それはそれ。真 […]
2019年1月18日 / 最終更新日時 : 2019年1月17日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 皇女タラカーノヴァ 一七六五年のパリ。まだ街が眠りから覚めきっていないような春の早朝。 「すぐに。そのうち。永遠に。すぐに。そのうち……」 朝日に輝く淡い金髪。その見知らぬ若い娘は、セーヌ川にかかる新橋ポン・ヌフの欄干にもたれかかり、ス […]
2019年1月18日 / 最終更新日時 : 2019年1月17日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 ここにいる ゴォン、ゴォン、ゴォン…… 数十本の配管が一斉に振動を開始した。壊れた計器やコントロールパネルの残骸が壁にへばりついた空間に、くぐもった金属音が虚しく響きわたる。 音が鳴ってから9秒待てば、この廃液処理室の内壁に毛 […]
2019年1月17日 / 最終更新日時 : 2019年1月16日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 AnotherAspect ~灯花祭にて~ 『お前とまたこうして会えるとは思わなかったよ』 『そうだな。そういえばラルスは元気にしてるか?』 『ああ。あいつは実家を継いでるよ。この間二人目が生まれたって話だ』 『……マジで?』 『ああ、マジで』 首都の目抜き通り […]
2019年1月17日 / 最終更新日時 : 2019年1月16日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 なのはな紳士協定 耳もとで風が鳴る。 内側から叩くように心臓が脈打つ。ペダルと一体化した足を一心に動かし、ただひたすらに前へ進む。 すでに息は上がりっぱなしで、喉がギュッと詰まるみたいだ。ハンドルを強く握る手が痛い。新しいサイクルジ […]