2016年2月16日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 奥州平泉猫騒動 「わー! こらっ、ちょっと、待ちなさいよ!」 毛越館けごしのたち中に響き渡る那津なつの声に、基衡は筆を止めた。 基衡はゆっくりと立ち上がると伸びをし、広大な池をたたえる庭を眺めた。庭に咲く梅の花々と、ウグイスの可愛ら […]
2016年2月15日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 猫の王 猫の往来ばかりしかない、その狭い空間を、ぼくは王国と呼んでいた。 握りつぶされた発泡酒の空き缶が転がり、食い散らかされたキャット・フードとその袋もしたいままに放置されて、雨が降ると猫の尿と下水のにおいがする、雨が降ら […]
2016年2月15日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 長靴を履いたスコの恩返し 「森山義希、恩返しに来たぞ」 ガソリンスタンドでのバイトを終え、コンビニ弁当の入った袋をぶらぶらしながら、一人暮らしのアパートへ帰り着いた俺を出迎えたのは、膝までの背丈しか無い、一匹の猫だった。 耳がクタンと垂れてい […]
2016年2月15日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 桜池の鈴 明治中期、桜の蕾が少しずつ開き始めた頃のこと―― 江戸から続いた呉服屋の娘、絹江と、その母、静江、そして静江が嫁入りの際にどうしても連れて行きたいと願った猫の小町が白昼堂々と姿を消したのだった。 老舗の呉服屋の中で […]
2016年2月15日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 喪に猫を放つ その日あたしは、タケシが死んだのを町内掲示板のペンキの板に貼ってあったのを見て知った。葬儀は今日だったから、とりあえず髪は昇天ペガサスMIX盛りだと派手すぎるから、タケシも死んでるし一等減じてMAX昇天盛りくらいにして […]
2016年2月15日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ なんでもない猫の日 秘策――待盾まちだて警察署刑事課神秘対策係は、今日も暇である。 係長の綿貫栄太郎わたぬき・えいたろうの姿もなければ、珍しく他の部署から押し付けられた事務仕事もない。本来の仕事であるオカルト事件の情報もない以上、最 […]
2016年2月14日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 猫の言い分 先生は小さな花束を差し出して、俺におめでとうとつぶやいた。 俺の肩にも届かない背を精一杯伸ばして、七歳年下のライバルは残念だったなと吐き捨てた。 主任研究員うみのおやは舌打ちした上ため息ついた。隠す気もない不機嫌顔 […]
2016年2月14日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 世界で一番かわいいこ ついに引越を決めた。荷物の収拾がつかなくなったのだ。たまたま隣駅で分譲賃貸タイプが見つかって即決する。家賃はあがるけどそれ以上に広かったのだ。「タイミングよかったですね」と担当の女性がなあに微笑んていた。相変わらずなあ […]
2016年2月14日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ ピートの葬送 「ピートが……猫が死んじゃったの」 葬儀センターにやってきた少女はそう言って、両手で抱えるほどの白い箱を見せた。 君がその箱を開けて現実を観測するまでは、猫は死んでいるし生きているんだ、などという文句を年端もいかぬ少 […]
2016年2月14日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ ネコは、怒っている 「雷針の、ばかあーっ!」 少女が叫ぶや否や、どおん、と近くの電柱が音を立てて割れた。 「ネコはっ、ネコは怒っている……!」 確かに雷針は言っていた。ネコの黒くてぴんとした耳を撫でて、今度の仕事がうまくいったら、お前の […]