2020年12月24日 / 最終更新日時 : 2020年12月23日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 怪奇探偵 死者からの手紙 「手紙の鑑定をお願いしたいんです」 応接ソファーに座った青年は、膝の上で手を固く握りしめている。どこか青ざめたような顔色を見るに、緊張しているのかもしれない。こんなに緊張している人を見ることはあまりにないから、緊張が伝染 […]
2020年12月23日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 出せなかった手紙 ――天ヶ瀬結様―― 荷物の整理をしていると、ファイルの間から一通の封筒がひらりと足元に落ちた。そこに書かれている宛名を見て、オレはそれが結局出せずじまいになってしまった手紙だと気が付く。 懐かしい名前に、オレの心の中に […]
2020年12月23日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 棕梠の姫 そのコンクリートの塀を城壁と呼んでいた。広い広い敷地を囲って、高さもあり、壁の上には有刺鉄線が張り巡らされいかめしい。書道教室の行き帰りにいつも通る道で、城壁の作る影は湿っていた。苔が生え、蟻や蜘蛛が這っていた。蟻を目 […]
2020年12月23日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 母を知らぬ片羽根の鳥たちへ ー拝啓イデアの救世主様へー むかしむかし、乙木家という華族の血筋を引いた立派な名家がありました。細君と称される美しく品の良い妻を旦那様が娶ったことにより、人々は名家に才色兼備な子宝を望み続けました。しかし奥様は長年不妊 […]
2020年12月23日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 アトリが跳ぶころ 花が咲く、と祖父は言っていた。 その場に、その空気に。厳かにして密やかな、誰にも手折られてはいけない花が。 ひとたび風が吹けば、新緑の髪がはらはらと揺れて視界いっぱいに広がった。日が傾くころには、紅みを帯びた光が照って […]
2020年12月23日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 紡ぐ血筋 「ファンレター?」「うん。どっさり来てるよ牧場に」北海道新ひだか町、日高への国道を少し外れたところにある小規模な牧場「かわの牧場」。この牧場に、突然ファンレターやプレゼントが大量に届くようになっていた。無理もない。この小 […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ゆきにねむる 雪にうずもれたこの地より遥かかなた、南の海に連なる小さな島々の中でも有人島としてはもっとも小さなとある島から手紙を受け取ったのは、冬眠時期も残りわずかな冬の終わりのことだった。 ポストに重なっている封筒のうち四通は兄か […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 隠れ姫の恐怖症 「お誕生日プレゼントです」 そう言って渡されたものを受け取って、少女――メディアは困惑を隠しきれなかった。 プレゼントらしく丁寧な包装も施されず、しかも蓋を開けて中身を見せた状態で渡された文箱。そこに、水色の同じ紙で統一 […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 前略、額の中より その絵には《恋文を読む女》の題がつけられていた。 一糸まとわぬ姿でソファに横たわる女が片手に便箋を持ち、気だるげにそれを眺めている。シンプルな構図と控えめな色彩が小さなカンバスに収まった一枚は、壁に並ぶ作品群の中では間 […]
2020年12月22日 / 最終更新日時 : 2020年12月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 フォゲミノ・フォゲミナ 君の愛してやまないものを、決して好きにはなれなかった。 あの冬の静かな朝も、夏のけだるい夜も。巧拙もよくわからない、詩人も画家も音楽家も。 夜明けの海が綺麗だからと、君はよく深夜に家を抜け出した。相棒の一眼レフを胸に […]