2021年2月8日 / 最終更新日時 : 2021年2月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ジェミナイの山鳩 雨が降っている。霧のようにしっとりと湿った、柔らかい雨だ。 霧雨にけぶる緑の山を見上げていたヒューイが背負子しょいこを担いだ。中型の弓を肩に掛け、両腰に吊った鞘の金具を確かめてからふたたび顔を上げる。 細く白いおもてに […]
2020年10月26日 / 最終更新日時 : 2020年10月24日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 星見先生とぶどうパン 夕どきの鐘が鳴るころ、店内はしあわせのにおいに包まれる。 うちの店はお城の表門やお役所がある大通りを折れてすぐのところにあるから、鐘が鳴ってしばらくすると戦場もかくやというほど忙しくなる。この時間はお勤め帰り、あるいは […]
2019年7月21日 / 最終更新日時 : 2019年7月21日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 Answer 前提として、地にはヒトと魔女が在った。未来視とその誘起、実現の神秘を有した魔女は長命で、個体数が少ない。生殖も稀である。一方、ヒトは増え、科学技術の扱いに長けた。魔女の神秘に迫るほどに。 そして問いが生じる。ヒトの科学 […]
2019年2月9日 / 最終更新日時 : 2019年2月8日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 日置 天狗の山には青花がほころぶ。 天狗の花は値千金の霊薬、花弁の油は千変万化の幻を見せ、茎や葉を煎じればあらゆる病を退け、全身に活力を巡らせる。干した根は若返りさえ叶えるとか。母様に教わったとおり、柳やなぎは天狗の山を奥 […]
2019年1月10日 / 最終更新日時 : 2019年1月9日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 Noteless 「どうして人類は全自動雑草処理機の開発に至らないんだろうか」 「もしかして、ごく一部の特権階級に独占されてるんじゃ?」 「雑草一括処理魔術が実用化されないのは、組合ギルドと除草剤メーカーとがおいしい関係になってるからに決 […]
2018年5月20日 / 最終更新日時 : 2018年5月19日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 陽炎立つ 「なー、ちょっと教えてほしーんだけど」 ぞんざいに呼ばれ、頬が引きつった。 それが人に教えを乞う態度か。苦言をすんでのところで飲み込んで、リフィジはペンを握る指を解く。彼はこちらの心の安寧を乱し、嵐を投げ込むことにか […]
2018年4月19日 / 最終更新日時 : 2018年4月18日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 最大のミニマム 人類が地球に住んでいた頃、少なくとも呼吸することは無料でできた。大昔の話だ。今は水を飲むことや灯りを点けることはもちろん、酸素呼吸――生きるという前提にさえ、何らかのコストがかかるようになってしまった。 カノープス・ […]
2017年8月4日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 三.二秒のブランク 三.二秒のブランク 移民五周年を祝ってはどうか。 声はどこからともなく上がってきた。つまり、相当数の意見ということだ。 「まだ『移民』なんて状態には程遠いのにね」 『向こうは喜ぶんじゃないか。こっちでも何かしようって […]
2017年3月6日 / 最終更新日時 : 2020年8月21日 Review Review 凱歌(2) ――たった一度きりの約束、それは希望という名のなにか。 栄えある騎士の国、イルナシオン。 貧しい平民の家に生まれたデュケイは、剣の才能だけを頼りに騎士位を得ようと努力を積み重ねていた。 友人のシャルロッテの紹介で高名な騎 […]
2017年1月20日 / 最終更新日時 : 2020年8月21日 Review BL・百合 エフェメラのさかな 海と人魚をテーマにした、SF・ファンタジー短編集。 2016年秋の新刊です。 空と宙がテーマの「ヴェイパートレイル」とともに初めての方にもお勧め。 鬼の若者と人魚の姫の視線の交差を描く「白露」「海神の炎」、 船乗りと宇宙 […]