2017年2月1日 / 最終更新日時 : 2017年1月31日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 幕が上がる 京阪電車の特急のブレーキは、上質な弦楽器のような低音を奏でる。その懐の深い音に体をあずけて、私は世界でいちばん残酷な嘘について考えていた。 主宰として劇団を旗揚げしてから、四ヶ月に一度、公演を打つことを目標に掲げてや […]
2017年2月1日 / 最終更新日時 : 2017年1月31日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 いとのいと 俺は蜘蛛女に殺されるのだ。 運命の赤い糸ならぬ蜘蛛の糸が、俺の右手の小指にぐるぐると巻きついて指の先が見えない。糸の先をたどれば、妖しくも美しい女子生徒の指先へと繋がっている。 なぜこんなことになってしまったのか。 […]
2017年1月31日 / 最終更新日時 : 2017年1月30日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 fragile 世界樹の街十二番街《黄昏通り》三番地。大樹に寄りかかるようにしてどうにか建っている小さな店こそが《ユージーン骨董店》だ。 「おいこら、おっさん!」 『準備中』のまま釘で打ちつけられた札を無視して扉を蹴飛ばせば、奥から […]
2017年1月31日 / 最終更新日時 : 2017年1月30日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 10の真実 あの人の嘘のやうなるしやぼん玉 稲光美しき嘘頑なに 悲しくはないと滂沱の日焼の子 嘘言ひしあとの峰雲鉛色 夢の国花火とともに溶けゆきぬ 病室を去る短日 […]
2017年1月31日 / 最終更新日時 : 2017年1月30日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 告白 「失礼します」 「どうぞ」 おそるおそるカーテンを開けると、ベッドの上の人物と目が合った。 穏やかな表情をしたその人に、見覚えはない。 「××さん?」 どこか嬉しそうに、相手は問いかけてくる。 「……はい」 「呼び […]
2017年1月30日 / 最終更新日時 : 2017年1月29日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 イグ・カフェにて わたし、本当は歳もとっているし、肌だってアプリで絹タッチ+5まで補正したし、見る角度によっては似ても似つかないって言われるかも。髪も生まれたときからチリチリの縮毛だけど、送った写真はロング・ストレート。画像を見て、えっ […]
2017年1月30日 / 最終更新日時 : 2017年1月29日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 深海魚飼育のウソ 実物の深海魚をみられる場所は、一般の人なら水族館だ。深海魚を展示の目玉にしている水族館のツイッターアカウントでは、深海魚が手に入ると、展示のお知らせをしてくれる。 深海魚の長期飼育は、どの水族館でも難しいようで、ある […]
2017年1月30日 / 最終更新日時 : 2017年1月29日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 神様は嘘をついた 「そうだな、死んだりしない」 目の前で肘枕をついて大きな欠伸をしたその人は、酷く詰まらなそう言った。 「そうなんだ、いいなぁ!」 死んだりしないと言う事は、ずっと生きていられる。来年も再来年も、何十年も何百年も生きて […]
2017年1月29日 / 最終更新日時 : 2017年1月29日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 にんげんと、にんげんだったものの、よる 窓から見上げた夜空は、俺が知っているこの街の空とは違っていた。夜闇の天蓋がやけに暗く、その上に都市部ではとうてい見られない数の星が散りばめられている。街じゅうに設けられた街灯の存在を忘れているのか、それとも『彼女』の故 […]
2017年1月29日 / 最終更新日時 : 2017年1月28日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 缶詰Friend 彼女は、明るい緑色の髪を風になびかせていた。 夕方の河原に一人。制服姿で川を眺めているだけなのに、その姿はよく目立つ。 髪の色のせいだ。彼女の背後にある土手を行きかう人たちが、彼女の姿をちらりと見ては過ぎ去っていく。 […]