2017年8月16日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 だんじり捕物帖 賑わう南海電鉄岸和田駅中央口を亨とおるが出た時だった。 「下松享やな」 三十台位の濃いスーツの男が威圧的に寄り、手帳を出して開く。 「砥田とだ秀雄氏ほか殺害の――」 そこまで聞いたところで享は男を突いた。 体勢を […]
2017年8月16日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 イノセンス 青褪めた春の残り香を、あなたは愛したのだろうと思う。 はれの日に似つかわしい、明さやかな秋の午后ごご午後だった。人知れず弔われたあなたの身も知らず、世界は祝福を謳う。 おめでとうございます、姫君。いいえ、おめでとう […]
2017年8月15日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 マッコウクジラ 人間、といういきものを知っているか? あの賢しく傲慢で悪食の、二本脚のいきもの。 まあ、こんな浅いところにいるのなら、見たことくらいあるよな。イカも、マグロも、ときには地底のヒトデさえ分別なくさらうあの大きな網の船を […]
2017年8月15日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 とある喫茶店とサーオインの少年 「どうですか店長? 今度のハロウィーンに合わせて、かぼちゃのチーズケーキを作ってみたんですけど」 今日は久しぶりに店長が喫茶店にいる日。看板娘である織部茶々良おりべささらはどきどきしながら試作品の菓子を振る舞った。 「 […]
2017年8月15日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 祭りの外 いつ来てもこの通りは人が多い。多くの商店が通りの両側に軒を連ねているせいで、普段から多くの人が行き交っているが、今はことさら多かった。太陽がまだ空の高い位置にあるというのに、正体をなくしている酔客の姿が目に付く。居酒屋 […]
2017年8月14日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 未熟な心持ち 遠くから盆踊りの太鼓の音が聞こえてくる。 毎年近所の公園でやっている盆踊りだ。その広い公園のグラウンドにはいくつもの屋台がグラウンドの周回を並び、真ん中には矢倉が立てられる。矢倉の中にはでかい太鼓があり、自治会の関係 […]
2017年8月14日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 Point of no return あまり髪を切りたくなかった。でも妻は髪を切りたがった。 「おもいっきり、ばっさりと」と妻は言った。だから僕の頭部に係わる一切を彼女に委ねた。妻は鋏を鳴らしながら指さばきよく僕の髪を落としていった。髪の毛はいまのままでも […]
2017年8月14日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 二つの謝肉祭 ― 流天使・閑話 ― シャラシャラと、薄い衣や手首手足につけた薄い金具を器用に打ち鳴らして、広場中央で舞踏を披露する少女が一人。その歌声は取り巻く大勢の観客の声援をしてなお、誰の耳にも届く美麗な風情。 唯一たる神 その使いたる御方々に […]
2017年8月13日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 玉繭の庭にて この庭は常春だけれども、季節の変化は外を覗き込めばよくわかる。 セツは、門から家の外の様子を窺った。短い夏はいつの間にか去ってしまった。涼しげな風に、セツの白い髪がなびく。澄んだ高い空には、茜、橙、山吹、色とりどりの […]
2017年8月13日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 Honey 「いいの、ほんとに?」 「したいって言ったの俺じゃん。おまえがやだって言うならいいけど」 「そうじゃないけど……」 歯切れの悪いそんな返答を前に、らしくもない、と笑い飛ばしてやりたくなるような衝動を抑えたまま、洗い晒し […]