2017年9月11日 / 最終更新日時 : 2017年9月10日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 ふながしのこと 氷輪が時折雲に隠れながら、ぼんやりと朧に浮かんでいる。透き通った水面は鏡のように月の輪郭を描き、ゆらゆらと揺れていた。 滝が勢いよく落ちゆく音がする。肌を撫でる風は冷気を帯びて、時折、葉擦れの音がざわざわと響く。人気 […]
2017年9月11日 / 最終更新日時 : 2017年9月10日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 白いカーネーションを添えて 白いカーネーションを添えて 今日はどうですか? 体に不調はありませんか? ……ふふ、毎日同じことを訊いているとお思いでしょう? すっかり口癖になってしまいました。でも、日ごと日ごとに込める意味が多くなりました。 […]
2017年9月10日 / 最終更新日時 : 2017年9月9日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 醤油祭のはじまり また故人からメッセージが届いた。「終活」なんて言葉が流行ったが、今は生前にメッセージを用意するのは普通の習慣だ。そうした最後の言葉はたいてい死亡届の受理からすぐに配信される。だけど今回の送り主は、死後半年も経ってから送 […]
2017年9月10日 / 最終更新日時 : 2017年9月9日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 このひとときを、いつまでも ピピピピピピ……。 「うーん……」 手を伸ばして目覚ましを止め、起き上がる。 今日は大学生になって初めての文化祭。 「たのしむぞー……」 あぁ、眠い。ぱたり、と布団に寝転がる。昨日は追い込みで遅くまで作業してたから…… […]
2017年9月9日 / 最終更新日時 : 2017年9月8日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 夏の熱源 太陽の熱、人体の熱、機材の熱。そこにさらに「熱意」なんていう熱源不明のモノが加わって、渦を巻いて、ねじれていく。どろどろもわもわがんがん。うねる。 好きな人にはたまらない雰囲気なのかもしれないけれど、特に興味もなく単 […]
2017年9月9日 / 最終更新日時 : 2017年9月8日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 気合いを入れろ 「気合いを入れろ」 俺の目の前で走っていた三つ編みの女子生徒、安藤が倒れた。 安藤の顔は真っ赤で息も絶え絶え。軟弱すぎる! その女子生徒の様子に俺は、 「気合いが足りんな! この程度で倒れるとは!」 と生徒たちに […]
2017年9月8日 / 最終更新日時 : 2017年9月7日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 線香花火 ぼく、佐々木夜はその祭りに対して一つも期待していなかった。小さな町での催しだし、屋台の数も少ない。なにより生まれてこの方十年間、毎年参加しているのだから規模の程など知れている。 だというのに幼馴染の河瀬三海はとても楽 […]
2017年9月8日 / 最終更新日時 : 2017年9月7日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 写影 赤い浴衣姿の、十六歳位の少女がこちらを振り返りつつある。伏せられた目に被さる長い睫毛と、肩に届かない、女にしては短めの黒髪、結ばれた口が印象的だ。手に持っているのは一輪の彼岸花のようだと錯覚したが、よくよく見ると紅の風 […]
2017年9月8日 / 最終更新日時 : 2017年9月7日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 写真 はっきりいおう。僕は「お祭り」という類いのものは嫌いだ。 特に、神輿を担ぐ祭りやハロウィン等の仮装イベント。「祭り」という名前を利用して、ただ馬鹿騒ぎをしたいだけとしか思えない。 そもそも、ハロウィンは豊作を祝うも […]
2017年9月7日 / 最終更新日時 : 2017年9月7日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 ラストオーダー 絶え間なく打ち上がる花火や爆竹の音、バカ騒ぎに興じる人々の歓声。締め作業のためハンバーガーショップに居残る私は、押し寄せてくる騒音をぼんやり聞いていた。 市制記念日だった。 昼間には、絶妙にかわいくない薄汚れた着ぐ […]