2019年1月28日 / 最終更新日時 : 2019年1月28日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 名知らぬ花のその名前 「見たことのない花だ」 「新種かな」 生まれたばかりの子どもの体に、小さな花が咲いている。 それ自体は珍しい現象ではない。この国は花の神に愛されていて、人々は体に草花を生やして生まれてくる。 珍しいことは、この子ど […]
2019年1月28日 / 最終更新日時 : 2019年1月27日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 雪の庭 雪が降っていた。水気の多い雪である。地面に落ちると自分の重みでぺしゃりとつぶれてしまう雪だった。 一匹の三毛猫が古い民家の軒下にいた。黒の部分が多めのその三毛猫は、寒がる様子もなく雪を見ていた。 民家は半ば朽ち果て […]
2019年1月27日 / 最終更新日時 : 2019年1月27日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 幸福の花冠を瞳に残して 「サムエル、どうして行ってしまうの」 十に満たない年の王女は、二十ほどの青年の服の裾を掴んで訴えた。石で造られた城の静寂な廊下には、彼女の声だけが響いていた。 留学のため、南東の大国イスキオへの旅立ちを控えた青年サム […]
2019年1月27日 / 最終更新日時 : 2019年1月27日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 この花がある場所 最寄り駅を出発した時には空いていた車内は、座席がすべて埋まり、立っている乗客も多くなっていた。 左隣に座る人にぶつからないよう、蒼乃(あおの)は花束を抱え直す。 白とピンク、水色、淡い紫。花は一つ一つが小さく、茎は […]
2019年1月26日 / 最終更新日時 : 2019年1月25日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 ご自宅用 「ご自宅用ですか?」 そう聞かれ、思わず「はい」とうなずいてしまった。 気付いたときにはもう、一輪の豪奢な赤い薔薇は無骨なクラフト紙に包まれていた。 自宅に持ち帰るのは間違いないのだけれど。 やっぱりプレゼント用 […]
2019年1月26日 / 最終更新日時 : 2019年1月30日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 第二ボタンの約束 うららかな春の陽を受け、女学院の講堂のステンドグラスが穏やか微笑んでいる。二つ歌を唄って解散です、と聞いている翼つばさは、詰襟身支度を整え花束を抱え直した。パイプオルガンが奏でる一曲目は馴染みのない歌だったが、二曲目は […]
2019年1月25日 / 最終更新日時 : 2019年1月24日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 仕立て屋さんの娘さんの娘さん 「仕立屋さん♪」 隣のおばちゃんは私をそう呼んでいた。 「はい」 と返事をするとおばちゃんは 「お返事の良い子ね」 お菓子をくれ頬張る私を愛おしそうに眺める。 「百花ももか、帰っておいで」 母の声がし、私を見送る […]
2019年1月25日 / 最終更新日時 : 2019年1月24日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 シロツメクサ 「何やってるの」 僕の声に、彼女はわずかに肩を震わせただけだった。傾いた日に長い影を落としながら、振り向きもせず、何事もなかったように作業を続ける彼女。聞こえなかったふりをしたのだろう。 「寺内さんでしょ? そんなとこ […]
2019年1月25日 / 最終更新日時 : 2019年1月24日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 フェンネル謎解記録帳~紅葉が描いた花 カランコロンと、ドアベルが軽快な音を立てた。その音に、『フラワーショップ・フェンネル』の大学生アルバイト店員、間島和樹は「いらっしゃいませ」と言いながら振り向く。 客は、幼い娘と母親の親子連れ。何度も来店している常連 […]
2019年1月24日 / 最終更新日時 : 2019年1月23日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花を贈らぬ者 人気の無い路地に、その身を何とか滑り込ませる。 頽れそうな自分の身体を支えるために、七生ななおは激しく首を横に振った。 脳裏を過ぎるのは、先程、大通りで見かけた光景。人混みに殆ど紛れてしまっていたあの小柄な影は、間 […]