2019年1月24日 / 最終更新日時 : 2019年1月23日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 彼岸に咲く赤 そこは薄暗い木立(こだち)の中だった。 まだ少しぼんやりとした心持ちのまま、伊澄(いすみ)は周囲を見回した。木立の奥からはさらさらと川の流れる音が聞こえてくる。見知らぬ場所。けれど、きちんと理由があってここに来たことだけ […]
2019年1月24日 / 最終更新日時 : 2019年1月23日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 清涼の里の花売り 「子供は入ってはいけません」 そうひらがなで書かれたプレートで囲まれたエリアがこの村、ジョンノンにはあった。万が一この先に入ってしまうと、とても怖い思いをするのだという。そしてジョンノンの大人たちはプレートで囲われた […]
2019年1月23日 / 最終更新日時 : 2019年1月23日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 コーヒーとまんじゅう 花を贈ろうと思った。 人はなぜ花を贈るのだろう。 美しく命の短いものを贈るのがはたして最上なのだろうか。 例えば美しく希少価値のもの、ダイヤの指輪だとか、予約の取れないレストランやオーダーメイドの歌なんかもその希 […]
2019年1月23日 / 最終更新日時 : 2019年1月25日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 試験 コトリ、と机上に置かれた木工細工に、銀髪の青年魔道士ソーサラーは怪訝そうな目を向けた。 着彩はされていないが、七弁ななべんの花を模した彫り物。女性の掌に乗る程度の大きさで、着衣の胸元に着ける飾りに出来そうな雰囲気だ。 […]
2019年1月23日 / 最終更新日時 : 2019年1月22日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 flavors of life. 「ただーいまー」 お客さんに会うから、と珍しくスーツ姿で家を出て行った忍が帰宅と共に持ち帰ったのは、いやに愛らしいパステルカラーの花束だ。 「ねえ周、花瓶あったよね? どこに飾ろっかな、食卓でいいかなぁ?」 はい、と […]
2019年1月22日 / 最終更新日時 : 2019年1月22日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 百年の刹那 コンコン コンコン 「うっせー……」 夢の中まで響いてきたノックの音に飛び起きたものの、部屋はまだとっぷりと暗く、まだ夜も明けきっていないと悟って溜息を吐く。 独身寮から越してきて一月ひとつき、ようやく一人暮らしに […]
2019年1月22日 / 最終更新日時 : 2019年1月21日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 やりきれない夜に どうにもやりきれないことがペン先よりもすばやい速度で鋭くやってくるので、どうにもやるせなく『海辺のカフカ』や『試みのユダヤ・コンプレックス』、あるいは『はたらくカッパ』を読んでみるが、どうにもやるせない。けっきょく、や […]
2019年1月22日 / 最終更新日時 : 2019年1月21日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 さいごの授業 先生は、あす学校からいなくなる。 だというのに、いつものように国語の授業はすすんだ。 いつものよう、に教科書を無視した授業は大人には不評だったが、生徒には何かと都合がいい。今日の先生は生徒に背を向けて、一心不乱に四 […]
2019年1月21日 / 最終更新日時 : 2019年1月30日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 あの人へ花束を 朝夕の花壇の水やりは、園芸部員の日課だ。 わたし以外にも数人が在籍しているのだけど、家が遠いとか実質は帰宅部に近いとかで、特に早朝は出てこない部員が大半だった。 だから3年生が引退してからは、朝の水やりはほぼ、わた […]
2019年1月21日 / 最終更新日時 : 2019年1月21日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花びらは、夜に降る 白い花びらが、夜の闇を染めていく。夜の底は白く、綺麗ねと君が呟く言葉も溶けてゆく。花びらの落ちはじめを見ようと見上げる彼女の輪郭が陶器のように滑らかで、その輪郭を夜がなぞっていた。身体の奥が、儚さに締め付けられるように […]