2019年8月19日 / 最終更新日時 : 2019年8月18日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 小組曲 Ⅰ オーヴァーチュア 島はひっそり海に浮かんでいた。風とともにやってきた波が島の縁に当たっては、静かに砕けるだけだった。深緑の森の間に、一本筋のように民家や砂利道だけが白い。風力発電の風車が四本、くるりくるりと回っている […]
2019年8月18日 / 最終更新日時 : 2019年8月18日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 さよなら兄さん、さよならピンクローズ ピンク色の銃をこめかみに当てて、引き金に指をかける。部屋はお菓子の香りで満ち、丸い窓から眩い光が注ぐ。 なんでこんなことをしてるかって? それじゃあ、引き金を引くまでの短い間、僕の話をしようか。 僕の名前はロゼ。 […]
2019年8月18日 / 最終更新日時 : 2019年8月18日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 折句短歌 鳥十題 ヤタガラス やわらかにタンポポ綿毛ガスタンクランプの傘にすらっと積もる テラツツキ テキストの羅列ながめるつながりが津波のように君へと流れ シラコバト 蜆買いらっきょう漬ける子供らとバランスゲ-ム取ればゆらゆら コノハズ […]
2019年8月17日 / 最終更新日時 : 2019年8月16日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 元暁異聞 一、 旅装をした二人の僧が山道を下って行く。「元暁どの、大丈夫ですか?」 前を歩く若い僧が後を振り返りながら問い掛ける。「ああ、平気だ。日も暮れ始めたことだし、空模様も怪しげだ、急ごう」 元暁は力強く答えながら歩みを速 […]
2019年8月17日 / 最終更新日時 : 2019年8月16日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 君の色、その理由。 アトカシスト城は、俗にいう開かれた城。 旅人にも解放され、それこそ中庭では商人が出店を開いていたりもする。行き交う人々は、人種も種族も様々。こと、この時期は特に。 今、この時期は季節が移り変わる時―時の音と呼ばれるー大 […]
2019年8月16日 / 最終更新日時 : 2019年8月16日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 イベントこわい イベントこわい、と彼女は言った。「は? なんで? 楽しみだって言ってたじゃない?」 俺がそう問うと、楽しみだけど怖いんだ、と彼女は言う。増々意味がわからない。 自分が楽しんで書いた物語を本にして、それを自分で売るんでし […]
2019年8月16日 / 最終更新日時 : 2019年8月16日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 ナイト・パーク 背後で大きく喉を鳴らしているかと思えば、ごぇっと暗がりに音が落ちるように響いた。未知なる獣がする雄たけびのようなげっぷ。「きったねえな、獣かよ」と言い放ちながら、キリンラガーの大瓶を右手から左手へ持ち替える。そして飲む […]
2019年8月15日 / 最終更新日時 : 2019年8月14日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 ミオソティス 目の前に絶世の美女がいる。否、違う、違う、そうじゃない。目の前にいる女が絶世の美女に見える。この差はすごく大きい。世間一般の美女の条件で言えば、精々色白ぐらいしか佳澄には当てはまらない。その色白だって、元はただ不健康な […]
2019年8月15日 / 最終更新日時 : 2019年8月14日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 彼は惨死の先を視る ※作中に流血・残酷表現を含みます 「エーテルトカゲ?」「鰐ワニじゃないかな」「ドドンゴじゃねえの」 曇天の沼地を泳ぐ何かを見つけた男たちは、それぞれの故郷で存在を聞いた、凶暴な水棲の肉食獣を思い浮かべた。 各々の得物を構 […]
2019年8月14日 / 最終更新日時 : 2019年8月13日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 老婆の叫び 老婆の叫び 妻の母国の中都市のバスターミナルで、乗り継ぎの長距離バスを妻と二人で待っていた時のことだった。二人で出発ホーム近くのベンチにすわって、バスが来るのを待っていた。そこに、他の長距離バスを待っているらしい一人の老 […]