2019年8月26日 / 最終更新日時 : 2019年8月25日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 想像の原資 科学は人々が想像できる未来を作る力を持つという。 その裏には誰も想像がつかないような未来は妄想と同じだという考えがある。 ――ならば私は妄想の世界に立っているということに と楓は高楼に囲まれた帝都のただ中で足をすくませ […]
2019年8月23日 / 最終更新日時 : 2019年8月23日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 何もない町 「何もない町ですよ」「取り残された町ですよ」「人が増えない町ですよ」 機械仕掛けの人形のように、そう口にしていた。 石畳にレンガの家。まるで異国にいるように感じさせるこの町に来た理由は、特にない。彷徨っていた末に辿り着い […]
2019年8月23日 / 最終更新日時 : 2019年8月23日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 蟹摂食思考機構 『え、待って待って待って。なんて言った?』 ディスプレイに映ったタマちゃんが眉間に皺を寄せる。あお髪のポニーテール、まるいのに鋭い眼つき、すっきりとした顎と鼻筋はデータであることを差し引いてもとてもきれいな女の子だ。そん […]
2019年8月22日 / 最終更新日時 : 2019年8月21日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 back to back 山間の小さな集落の、たった一軒しかない飲食店に、一日の仕事を終えた大人たちが集まっていた。休日を控えた土曜の夕方はいつも、地元住民と工事関係者で満席だった。 酒の肴はシンプルな料理と盛んなおしゃべり。耳をすませば愚痴ば […]
2019年8月22日 / 最終更新日時 : 2019年8月21日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 夢に棲む。 #01 ろくな夢をみない。 現実に近い悪夢で、ほとんどは遅刻の夢だ。 何かに間に合わない。 そこまで時間に追われてることなんてないだろう、という時も、細かい気がかりが夢に出てきて、目が覚めてから、「なんて安易な」とガ […]
2019年8月21日 / 最終更新日時 : 2019年8月20日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 小説と想像 想像は小説の執筆に欠くべからざる力であるかのように思われている。 小説を書いている者は世間では想像力が豊かと見なされているし、また書く側も、小説は想像力によってものされる技芸であると思いがちだ。それはおそらく誤りではな […]
2019年8月21日 / 最終更新日時 : 2019年8月20日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 果てのない物語 文字を読んでみたかった。既に親もその親も文字を読んだ事はない。誰も文字を見た事がないのだから、それがどんな物なのかを知らない。 初めて物語に触れたのは、父親がストーリーデバイスを渡してくれた時だ。五歳の頃だと記憶している […]
2019年8月20日 / 最終更新日時 : 2019年8月19日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 桜雲石 北の町を終着駅とする汽車は、客と荷を乗せ替えて再び首都へと戻っていく。 威勢のいい蒸気機関の音を遠くに聞きながら、吉野は小さな旅行鞄を片手に駅舎を出た。曇天の向こう側に、煤けた朝日の存在を感じる。 予想以上の寒さに思わ […]
2019年8月20日 / 最終更新日時 : 2019年8月19日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 静かな世界に、想像力を 〝静かだな〟 〝そう……ですね〟 〝なーんにも聞こえねぇ。……なんにも見えねぇ〟 〝……えぇ、夜明けはまだ、当分先です。静かで暗い、闇の世界に、僕らはいるのでしょうね〟 〝……若いの、いま何を考えてる〟 〝別に、何も〟 […]
2019年8月19日 / 最終更新日時 : 2019年8月18日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 審判 「古より、神話や伝説の中で人々は死した最愛の人を生き返らせようと、様々な方法で挑んできたが、成功した話を私は寡聞にして知りません。これから何年、何十年と時が経ったとしても、死者を蘇らせることは叶わないのではないか。人類は […]