2020年11月22日 / 最終更新日時 : 2020年11月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 葉の手紙 『なつみちゃんへ。 転校してきたばかりのぼくに、いつもやさしくしてくれてありがとう。お礼に、ぼくがみつけたきれいなはっぱをおくります。これからも、ずっと仲良くしてね。 あきらより』 ある秋の月曜日。秋良あきらはこんな手 […]
2020年11月22日 / 最終更新日時 : 2020年11月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 月影の手紙 ――わかっていた。自分は月でしかない。 金木彩堵かねきあやとという太陽を影で支えるだけの存在。 不幸だと思うか?それは、間違いだとはっきり言っておこう。 月は太陽に照らされなければ存在できない。 間違いなく俺は、お前 […]
2020年11月21日 / 最終更新日時 : 2020年11月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 レター・アンド・レイター 好きな人が出来た。佐久間遼くん。 正直、最初はちょっとかっこいいクラスメイトというだけだった。イケメンだし、すらっとしてるし。授業中に先生に当てられたらすらすら答え、体育ではいつだって主役。彼と、黄色い声で持て囃す女子 […]
2020年11月21日 / 最終更新日時 : 2020年11月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 解硬 水が沸騰を迎えてからすべてが蒸気へと変わるまで、しばらく時間があるように、私が先輩に愛想を尽かすまで、おおよそ三ヶ月の猶予がありました。 カセットテープが回りだすと聞こえてくる声に胸が締めつけられるのは、彼女との出来 […]
2020年11月21日 / 最終更新日時 : 2020年11月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 一葉一荷、雨季明けの王都より 陸軍所属の士官魔術師、ユジノ・レネンモリト中尉は三か月ぶりの王都の空気に辟易していた。 王都自体は初任配属の魔術戦略課時代に二年過ごした思い入れのある土地で、都会的な雰囲気は嫌いではないし、最新の書籍が並ぶ書店も気軽に […]
2020年11月20日 / 最終更新日時 : 2020年11月18日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ふりつもる 灰色の雲が近い。しんとした空気は重く湿気を孕んでいる。 図書室は、放課後の喧騒からほど遠くあまりにも静かで、滅んでしまった世界にただ独り遺された守人の気分を味わう。 守るべき物語を今、わたしは探しているのだと思い、世 […]
2020年11月20日 / 最終更新日時 : 2020年11月18日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 チコの手紙 すぐ近くに立っているのがチコだと気付いたのは、地元へ向かう電車がもう駅に滑り込もうというときだった。ずっと、大きな声で話している女の人がいるなあ、とは思っていた。だからさあ、先週行ったの、占い師のところ、そう、だって占 […]
2020年11月20日 / 最終更新日時 : 2020年11月18日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 宛先不明の旅 汽笛が聞こえた。 定刻どおり。 今日も同じ時間に港の方から聞こえる。 港といっても、蒸気船ではない。蒸気船が立ち寄れるほど、立派な港はない。 この村にあるのは、寂れた漁港と、そこから荷物を運び込むための貨物鉄道の駅だ。 […]
2020年11月19日 / 最終更新日時 : 2020年11月18日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 正しい依頼の読み取り方 組合酒場の大扉をくぐると、まだ早朝だというのに掲示板前にはかなりの人が群がっていた。 だが賑やかさや酒臭さは一切なく、大勢の先客達は、黙々と張り出されたいくつもの紙切れに視線を走らせている。「ええっ、混みすぎじゃないで […]
2020年11月19日 / 最終更新日時 : 2020年11月18日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ロギングマン、ロギングガール ぺたぺたぺた、走っていく音。シキがえいやと竿を振ると、鮮やかな夕日色が海を覗き込んだ。 「この辺いないよー。もっとあっち」「うーん人魚の有効活用。旦那ちゃんにも言ってくれ」「はーい」 様々あり、人魚が家に住み始めてから五 […]