2020年10月23日 / 最終更新日時 : 2020年10月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 思い出は蒼空〈そら〉に舞う あれはいつのことだったか。 確か、まだあいつの話を風のうわさで耳にしていた頃……―― 「あたしの父さんってどんな人なの?」 不意に娘からそんな質問を投げかけられ。ヒルダは、獲った魚に串を通す手を止めて瞼をぱちぱちまたた […]
2020年10月23日 / 最終更新日時 : 2020年10月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 弦音の文 「つまんない。折角道場に入れてもらえたのに、なんで冬樹が弓道やってる姿を前から見ちゃ駄目なの?」 今日は誰も道場に来ていないからちょっと見ていく? って言われて、嬉しかったのに。後ろ姿しか見られないんじゃ、つまんない。そ […]
2020年10月22日 / 最終更新日時 : 2020年10月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 雨降りの後は ――バンッ。 勢いよくリビングの扉が開き、思わず肩を揺らす。何事かと目を丸くして振り返ると、鬼の形相で仁王立ちする妻がいた。「……ど、どうしたの?」 恐る恐る声をかけるも、彼女は無言を返すばかり。そして、擬音を付ける […]
2020年10月22日 / 最終更新日時 : 2020年10月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 潮の間に漂う まるで煙を充満させたかのように空はどんよりと中途半端な白さを残して、所在なさげに今日もある。煙草を携帯灰皿にしまい込んで、煮えた湯に顆粒のコンソメと野菜の切れ端、ベーコンと油揚げを入れた。クルトンがないからその代わりに […]
2020年10月22日 / 最終更新日時 : 2020年10月21日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 たくさんの手紙を持って、わたしはこれから、あなたへと続く階段を上っていく 届くことのない想いを、手紙に綴ってみようと思った。 未練がましいかな、なんて思うけれど。どうせなら全部吐き出してしまおうと、ペンを手に取る。 「なんなら日付決めて書いてもいいかも」 そう、今日の秋の日を。 カレン […]
2020年10月21日 / 最終更新日時 : 2020年10月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 国王と夢の作品集 「シャープ、ここから一番近い本屋はどこだ」「あァ? 本屋?」 その間の抜けた返答を聞くなり、俺は『尋ねる相手を間違えた』と瞬時に悟った。この男、本屋という場所に微塵も興味がない。 我がムジーク王国の脳筋騎士団長は、読書と […]
2020年10月21日 / 最終更新日時 : 2020年10月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 なみだの暗渠 海辺へ向かうバスは花の香りでいっぱいだった。間違ってビニールハウスに乗りこんでしまったのかと疑うほどに。 乗りあわせた老人たちは色とりどりの花束を大切そうに胸元に抱き、車窓を流れる新緑の景色を見つめていた。カーブのたび […]
2020年10月21日 / 最終更新日時 : 2020年10月20日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 出会いの手紙の物語 彼らの経営する町の小さな雑貨屋。今日は珍しく開店休業状態だ。 日常使いできるちょっとした生活雑貨や、手作りの一点物のアクセサリーを販売している。 気さくで朗らかな店主とその“弟”の人柄も親しみやすいのか、雑談をしにきた […]
2020年10月20日 / 最終更新日時 : 2020年10月19日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 日に月に共に征く-朱陸の交わり- (一)陸子静 淳熙十六年(一一八九年)、仲春二月。 金谿は、長江中流域、江南西路と呼ばれる地域の東端に位置する、気候温暖な小都市である。梅の花は既に満開となり、その香を運ぶ風の冷たさも和らいだ。 宋王朝が異民 […]
2020年10月20日 / 最終更新日時 : 2020年10月19日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 タイム・カプセル おそらくは、思い出、というものは、ガラス玉を宝石に見立てるようなものなのでしょう。それは本物の宝石でなくとも、懐かしさと愛おしさをも光として、記憶の中に輝くのです。これは、そんな特別を記憶の中に埋め込んだ、ある一日のお […]