2020年10月1日 / 最終更新日時 : 2020年10月1日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 想託 深い緑の軸から連なる銀のペン先を、じっくりとインクに浸す。 すっかり手に馴染んだ軸を包み込んで滑らせれば、漆黒の文字が紙面を踊る。 ラムディスは、昔から字を書くことが好きだった。 声以外で思いを伝える手段として。自分の […]
2020年10月1日 / 最終更新日時 : 2020年10月1日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 かつてわたしの全てだったあなたへ ここはこの街にある唯一の修道院。おれがこの修道院で暮らし始めてからもうだいぶ経った。だいぶ経った時間のうち数年は、とある使命を受けて東の国へと旅立っていたけれども、無事に帰ってくることができた。 東の国から帰ってきてし […]
2019年9月12日 / 最終更新日時 : 2019年9月12日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 残響 人をも避ける空気から逃れるように入ったのは小さな喫茶店だった。薄暗く狭い階段を下りた先にある頑丈な木製のドア。 重々しいそれを開けると、対照的に軽やかなベルの音が鳴った。「いらっしゃいませ!」 ベルの音に似た軽やかな女 […]
2019年9月12日 / 最終更新日時 : 2019年9月12日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 三、四人立ち いつかの正月、獅子舞は神社を練り歩き、見物の子どもたちを順に噛んでいった。おれだけ噛まれなかった。となりにいた姉があたまをぱくりとやられ、きゃっと声をあげ、つぎはおれの番だとどきどきしていたのだが見過ごされた。おれの背 […]
2019年9月12日 / 最終更新日時 : 2019年9月11日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 妖精標本 パトロンの館は秘密でいっぱい。 昼下がりの光を受けた、足が沈みそうなほどに柔らかい絨毯の廊下を、フィスチェは歩く。真っ黒なフリルがたっぷりとあしらわれた服はパトロンのお手製、パニエで膨らんだスカートの裾を翻し、ぷらぷ […]
2019年9月11日 / 最終更新日時 : 2019年9月11日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 翼をください 子供の頃、空を見上げた時、鳥を見た。 自由に空を飛ぶ姿を見て、羨ましく感じた。 少し大きくなった頃、見上げた空の先、鳥よりも高い所を飛んで行くものを見た。 それが飛行機と言う、人が動かす機械だと知った時、憧れを抱いた。 […]
2019年9月11日 / 最終更新日時 : 2019年9月11日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 アンダーバー&ダブルクォーテーション 叫んだときに一番カッコいい記号の名前は、「アンダーバー」だと思っている。漫画とかアニメのヒーローの必殺技っぽい。ぜひポーズを決めながら、高らかに大声で叫びたい。必殺! アンダー・バー!!そんな話を夫にしたら、「ダサくない […]
2019年9月10日 / 最終更新日時 : 2019年9月10日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 鳥と竜の交錯した日 『頼む。――我を、故郷まで連れて行ってはくれないか』 既に肉体の器は消滅し、天へと還る〈宿命さだめ〉にある魂の声に、少女は頷き、その様子を見ていた青年はやれやれと力なく笑った。 ■ 平原を翔け抜け、いくつかの山を越えて […]
2019年9月9日 / 最終更新日時 : 2019年9月9日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 ただ話すだけの夢 灰白色の大地。 「なあ、ここはどこなんだ」 わからない。でも、夢の中だと思う。「夢? それはどうして」 俺の寝入りは早いんだ。スマホのアラームをセットして、頭から布団をかぶる。すぐに眠れるから、こんな見知らぬ場所に行く […]
2019年9月8日 / 最終更新日時 : 2019年9月8日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 魔女と永遠 今日は散々だ、とイル・エウリは長い溜息をついた。歌い始めればみんな通りのいい高音部に聞き入ってくれるし毎日しっかり発声練習をしている伸びやかな高音は、ほんの少しかすれたって味だと思ってくれるけれど、本当は低音部のなめら […]