2020年10月10日 / 最終更新日時 : 2020年10月9日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 私のおばあちゃん おばあちゃんが死んだのは、四月に入ってすぐのことだった。 私は、おばあちゃんにおんぶにだっこで、おばあちゃんが死ぬまで、おばあちゃんの世話だけをして、生きてきた。「私の世話をして、家に居るんでございますよ」 おばあちゃ […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 行方知れずの手紙に溺れて しどけない倦怠を、はためかせた黒絹のガウンに含みながら纏っていた。はだけた肩を直すには、物憂さがすぎた夜が落ちてきている。湯浴みの残り香は、麗人を魔物めいて匂い立たせる妖艶に気怠い空気を添えていた。麗人は真っ直ぐ机に向 […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 木の葉の小舟 ──あいたいです── つたない文字でそうしたため、幼い少年は短いだが心を込めた手紙を木の葉を組み合わせた舟に乗せた。そしてそっと舟を川の流れに委ねる。 葉っぱの小さな舟は彼の切実な願いを記した手紙を乗せて、せせらぎと共 […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 双花&ばけのあわあわアワー!~不思議編~ 『風の噂に聞いたんですけど…』何日目かの車中泊の夜、同乗者を寝かしつけて自分も目を閉じたら、突然知らない声が車内に響いた。驚いて振り向くと、後ろの荷台に積んでいた非常用ラジオがいつの間にか起動し、どこかの番組を流していた […]
2020年10月8日 / 最終更新日時 : 2020年10月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 残暑お見舞い申し上げます 暑い日差しが降り注ぐ夏の日。近所のスーパーに買い物に行った帰り、ポストの中を見てみると手紙が入っていた。ダイレクトメールとか、そういった類いの物ではない。封筒の柄を見て、差出人を見る前から大体誰からのものなのか察しが付 […]
2020年10月8日 / 最終更新日時 : 2020年10月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 クラリッサの部屋 「おや、これは壮観だね」 病室に一歩足を踏み入れたアニタ・シェイクスピアは目を見張って声を上げる。 白を基調とした部屋の壁には、何枚もの絵が貼り付けられていて、その色鮮やかさに圧倒されたのだった。「博士。お久しぶりです」 […]
2020年10月8日 / 最終更新日時 : 2020年10月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 僕の最愛の従者へ 悪魔に襲われたあの日、幼い君は声を失った。 村を失い、家族を失い、その上、自身の命を失いかけた恐怖がどれだけのものだったのか、僕には想像することしか出来ない。 僕が君の命を助けることができたのは、ひとつの奇跡だ。 あの […]
2020年10月7日 / 最終更新日時 : 2020年10月6日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 渡らなかった手紙 エステル様 貴女がこの手紙を読んでいるという事は、私は何らかの理由で、貴女のおそばにいないのでしょう。 そしてこの手紙を、貴女自身が見つけられたか、他の誰かが見出したかで、貴女の手にあるのでしょう。 私が貴女のもとに […]
2020年10月7日 / 最終更新日時 : 2020年10月6日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 したためる想い 私はしがない小説書きでございます。未だこれといった代表作もなく、売り上げもぱっとせず、出版社にも家計にもまるで貢献できていません。しかし他に取り柄もないものですから、書くしかないのです。困ったときの拠り所もないものです […]
2020年10月7日 / 最終更新日時 : 2020年10月6日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙のかきかた 女王国の首都は、故郷の村よりも風の通りが少しだけ悪いような、そんな気がします。 背の高い建物といえば村の中心にあった教会くらい。霧明かりの向こうにそびえる山々に囲まれての暮らししか知らなかったわたしでしたから、少しばか […]