2020年12月16日 / 最終更新日時 : 2020年12月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 われはいもおもふ 「留守を頼みます」「お任せください、どうかよい夢を」 男爵は女王の額にそっと、しかし名残惜しさを感じさせる程には長く口づけをした。 精進潔斎を済ませた女王は毅然とした表情でひとり橋を渡り、冷たい穴蔵の奥へと消えていった。 […]
2020年10月15日 / 最終更新日時 : 2020年10月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 舐める家 少女のような家、というのが徳さんの表現だったが、話をよく聞いてみるとただのいわく付き物件だった。 機嫌を損ねるとお湯が出なくなる。機嫌がいいときに有精卵をもらってきたら、次の日には枕元にひよこがピヨピヨしていた。 そん […]
2019年7月24日 / 最終更新日時 : 2019年7月23日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 imogine!帝国戦隊インカレンジャー 第四十二話 悪のドクター 「そこまでだ!」「誰だ?」 悪の科学者ドクタージョハンセンの目前に五色のポンチョがひるがえりました。「皮も肉も赤く燃えるぜインカレッド!」「クールな料理で綺麗に発色インカパープル!」「なめらかな […]
2019年1月8日 / 最終更新日時 : 2019年1月7日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 おにおとめ 女は寒いときにそうするように、胸の前で腕を交差させ、自らをかき抱いた。袖の布が千切れそうなほど指を喰い込ませ、小刻みに震えてさえいた。やがて椅子に座っていられなくなって、カーペットに倒れ込んだ。半身を打った衝撃のえずき […]
2019年1月4日 / 最終更新日時 : 2019年1月3日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 クレマチスの街 この街は、もう終わりだな。 オレはアコーディオンの演奏をやめ、金の入らなかったぼうしを拾いあげた。夕焼け色の公園には、見物人は一人もいない。 この街に来たときは、まだ活気があった。でも、綿織物工場がつぶれたせいで、 […]
2018年5月26日 / 最終更新日時 : 2018年5月25日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 かなしからずやそらのあお 海にうかぶしろのなかにわたしは漂っている。 波をしろく搔きわけながらすすむ船は浪とおなじぐらいにしろく、おおきく、しろのように堅ろうに見えて、波間の木の葉のように頼りなげ。けれども波をいくつもつつんだ浪のようにひろく […]
2018年4月21日 / 最終更新日時 : 2018年4月19日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 りゅうぐうの手 その妓楼は、霧深き山奥にあってなお、誰からともなく竜宮りゅうぐうと呼び習わされている。 妙齢の女主人が『乙おと』、遣手やりてと女衒ぜげんを兼ねる老婆が『亀かめ』という名から来たものか、廓くるわの名にあやかって二人がそ […]
2017年8月20日 / 最終更新日時 : 2017年8月19日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 巫女の祭り トーマは村の中でも、大きな家に暮らしていた。 トーマの祖父が村で重要な地位についていたからだ。父と母はすでに他界している。女中たちや祖父の弟子たちが一緒に暮らしている大きな家だった。 下っ端のトーマの仕事は早朝から […]
2017年8月3日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 かもしびと ツノある者が笑いかけてきた。 霜月もあと十日で終わるという日曜のことだ。それはとても晴れた日で、セーターの上にチェスターコートの出で立ちでは、汗ばむほどだった。 普段は乗らない方面の黄色い電車に揺られ、駅から十五分 […]
2013年11月28日 / 最終更新日時 : 2013年11月28日 straycat Review 庭には アンソロジー形式の合同誌、第5弾。 ある通りに面した庭を持つ家々。誰の庭には何があるのか。執筆者は星野真奈美、文野華影、ひじき。 (サークルサイトより転載)