2016年8月31日 / 最終更新日時 : 2016年8月31日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 和珠が繋ぐ絆 「『和宝珠わほうじゅ祭り』? ねえ、このお祭りは何?」 夕暮時、肩にかかる長さの金髪の少女は、貼り紙を指で示した。後ろからついてきた銀髪の青年が、にこにこした表情で答える。 「ここから遠く東にある国が生み出した柄を和柄 […]
2016年8月31日 / 最終更新日時 : 2016年8月31日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 紙風船と万華鏡 夜の団地は、とても静かだった。 今、四階の階段はしんと静まり返っている。空はもう真っ暗。わたしたちがいる踊り場は、たよりない明かりがひとつ点いているだけだった。 遠くから、どこかの家の笑い声が聞こえてくる。テレビの […]
2016年8月31日 / 最終更新日時 : 2016年8月31日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 落ち葉の季節 大通りから一本奥に入った閑静な住宅街に、その建物はあった。 板塀に囲まれた一角。屋根のついた立派な門扉には、これまた立派な松の木が彫り込まれている。 あえてそちらは使わず、少し離れたところにある古めかしい通用門を潜 […]
2016年8月30日 / 最終更新日時 : 2016年8月29日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 河童のハニートラップ 土砂降りの雨の日のことだった。車のフロントガラスがしぶきで真っ白になるほどで、ウィンカーを高速で動かしていた。ウィンウィンという音に混じって、ガラガラガラガラと変な音が聞こえて来る。先輩刑事の藤波ふじなみはハンドルを握 […]
2016年8月30日 / 最終更新日時 : 2016年8月29日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 春臨しゅんりん 重い鈍色にびいろの空から、冷たい花片がふわふわと舞い降りてくる。 徐々に冷え込みが増す中、黒髪の長身の青年、ウィラード・ヴォーリュックは、根雪に重なった新雪の上を注意深く歩き、『重石おもし通り』と呼ばれる商店街にやっ […]
2016年8月30日 / 最終更新日時 : 2016年8月29日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 塔と孤独たちの昼餐 今はもう、その女性ひとの顏を思い出すことができない。黒くぽっかりとした丸で、ひとりでに頭部は塗り潰されてしまった。ただ、鏡をのぞくときに、自分の顏は彼女とそっくりだと言われていたことを思い、その硝子を叩き割りたくなるこ […]
2016年8月30日 / 最終更新日時 : 2016年8月29日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 お菓子を巡る物語 たっぷりの水に一晩浸しておいた、粒の揃った黒赤色の小豆を電気コンロにかける。沸騰したところでコップ一杯の水を加え、もう一度煮立ったらザルに上げて渋切り。指で軽く潰れるようになるまで電気コンロの温度加減を調節しながらもう […]
2016年8月29日 / 最終更新日時 : 2016年8月28日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 片腕 片腕を一晩かしてやろう、とあにが笑いながら言ったので、冗談だと思い、応、とうなづいた。肩からことりと右腕を外して差し出してきたのにはさすがに瞠目したが、それよりも差し出された腕の皮膚のなめらかなことと白いこと、そうして […]
2016年8月29日 / 最終更新日時 : 2016年8月28日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 手品師と煙 川に抱かれて佇むその街は、青灰の石の組み合わせでできていた。川を底として盛り上がる地形そのままに石造りの家々が積み重なっている。宅地の連なる丘には――誰かの屋敷の庭なのだろう――緑が点在し、石塊から彫り出された街のそこ […]
2016年8月29日 / 最終更新日時 : 2016年8月28日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 BAR NAGOMI 午後十一時。夜に負けない光り輝く都会の街。 もうすぐ三十歳を迎える、神谷道子かみやみちこはイライラしながら駅に向かっていた。労働基準法なんて飾りだということを示唆する程のサラリーマンの群。おまけに仕事では何ヶ月にも渡 […]