2017年2月12日 / 最終更新日時 : 2017年2月11日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 ヴァレンティヌスより愛をこめて キリスト教徒の司祭が一人、捕まったと聞いた。 アステリアが彼に会いに行こうと思い、都長官である自分の父の管轄にある牢に向かったのは、彼女が暇だったからだ。彼女にとって、牢に入った囚人たちを冷やかしに行くことなど、ただの楽 […]
2017年2月12日 / 最終更新日時 : 2017年2月11日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 僕は魔王にはなれない 「とりあえず、何も聞かずにこのゲームやってもろてもええですか?」 その日、常連になっている大学近くの喫茶店にて。古ぼけた木製のドアが勢いよく押し開き、取り付けられた鈴の音が店員を呼ぶのも放って。 「ロミオ先輩」 背後 […]
2017年2月11日 / 最終更新日時 : 2017年2月10日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 永久の夢を夢見て つらいことばかりの人生でした。生きていることに常に後ろめたい気持ちでいるような、この世界に自分一人分の居場所を取っていることにさえ申し訳なく感じるような、そんな思いを抱きながら生きてきました。 命は等しく生きるために […]
2017年2月11日 / 最終更新日時 : 2017年2月10日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 彼方に送るは虚か実か 箸が床とぶつかる甲高い音が、やけに大きく響いた。固まったままの右手から少しずつ感覚が消えていく。壁にかけられたテレビから視線を逸らすことができない。昼のニュースを担当するリポーターが、真剣な顔をして原稿を読み上げている […]
2017年2月10日 / 最終更新日時 : 2017年2月10日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 Fibber&Wimp 警告灯の灯りが闇を舐め、Keep Outのテープが場を切り裂き、ざわめきが静寂を乱す。 そんな様を横目で見ながら、俺、私立探偵ジェフリー=クロウズは、一人煙草を吹かしていた。 別段、高みの見物って訳じゃ無い。 い […]
2017年2月10日 / 最終更新日時 : 2017年2月9日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 夜のさんぽ あるいは男子高校生のとりとめのない 小学生の頃、学校の行事で地域のゴミ処理場に行った。燃えるゴミ、燃えないゴミの中のビンカン、鉄くず、木くず、大きなゴミ……集められたゴミがどんなふうに燃やされて、リサイクルされるのかを学ぶ、どこの小学校でも必ず行う社会見 […]
2017年2月10日 / 最終更新日時 : 2017年2月9日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 やわらかな檻 会ったばかりのおとこの腕に抱かれながら、沙々奈ささなは宇宙空間が広がる天井を眺めていた。耳のそばではおとこの腕時計がかちかちと鳴っている。午前二時を回ろうとしていた。 いまごろ兄はどうしているだろうかと目を閉じて姿を […]
2017年2月9日 / 最終更新日時 : 2017年2月9日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 モーション・ピクチャー・サウンドトラック ブラウン管に映る男は絶叫していた。叫ぶことで、身の内に宿った、害為すものを吐き出そうとしているみたいに。 粒子の荒い像から表情はほとんど伺えないけれど、大きく開く捻れた唇が、彼の苦悶を象徴していた。背後のドラム・セットを […]
2017年2月9日 / 最終更新日時 : 2017年2月8日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 高い値段の「嘘」の代償 都内の地下鉄の駅を降りたその瞬間だった。私は、背後から一緒に電車を降りた男性から遠慮がちに肩を叩かれたと同時に、おずおずとした様子で声をかけられた。 「なあなあ。あなた、左肩に悪霊が憑いてるぞ」 「…………………はっ?! […]
2017年2月9日 / 最終更新日時 : 2017年2月8日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 ブラックベルベット・サァカス 鵺の襲来を告げる鐘が、常夜の闇に響き渡る。次いで聞こえる歓声、銃声、悲鳴、鵺の鳴き声。 霧之宮聖吾きりのみや せいごは潔癖な白い頬に疲労の色を滲ませながら、壁にもたれて一息ついた。遠く、夜攘よばらい衆の白い軍服が、夜 […]