2017年2月8日 / 最終更新日時 : 2017年2月7日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 嘘つきレジェン Sequel (テキレボアンソロジー版) あれから一〇年が過ぎた。 トウラ先生は世を去った。魔法の復興はなされぬまま、無念の最期を、私が看取った。マーディアスは、今なお命だけは長らえていると聞いている。周囲の人々が、彼がもはや無意味な言葉を撒き散らすだけの不 […]
2017年2月8日 / 最終更新日時 : 2017年2月7日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 悲恋を望んだエゴイスト 十一月、東京のリサイクルショップで働いている僕は年末年始の帰省を許された。 働いていると言っても給与は現物だ。一番多く貰っているのは食事だけどそれ以外にも店で扱っている電気ケトルや服、本棚なんかを貰う。 そんな僕は […]
2017年2月8日 / 最終更新日時 : 2017年2月17日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 自由に道は選べなくても 国立高等士官学校の学年末。季節は早春、温暖な気候の国シャルウィンでも、まだ少し風が冷たく感じられる3月のはじめ。数日前に卒業生を見送ってからは校内の様子もどこか寂しげだったが、今日は誰の顔にも活気があった。明日から十日 […]
2017年2月7日 / 最終更新日時 : 2017年2月7日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 舞台上の合法 刃が胸を貫いた瞬間から、憎悪が、狂気が、消えていった。挫くじかれたのは端正な顔立ちの悪役俳優である。重い鎖から、報復という荷から解き放たれたように主役の一撃に絶命する断末魔のひととき、悪意は昇華してうろのような目をした […]
2017年2月7日 / 最終更新日時 : 2017年2月6日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 魔法少女の掟 「自分が世界に残された最後の人間になったらどうする?」 小学生の頃、友達とそんな話をしたことがあったと、最近よく思い出す。あの時なんと答えたか、たった数年前のことなのに思い出せない。 こんなことを思い出しているのも、 […]
2017年2月7日 / 最終更新日時 : 2017年2月6日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 嘘とゲームと幼なじみ 「おまえさぁ、嘘つくの止めておけ。下手だからすぐバレるぞ」 チャットアプリに着信があった。相手は幼なじみで、なにかと思えば痴話喧嘩という名の惚気話。まったく、聞いている身になれっての。しかも嘘をついているのがバレバレだ […]
2017年2月6日 / 最終更新日時 : 2017年2月6日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 そらふね 鮮やかな色の果物や野菜が並ぶ八百屋の店先。客の邪魔にならないように愛車であるバイクを止めて、男は煙草をふかしていた。細い煙が、風に乗って空へと溶けていく。つい、と空を見上げれば雲一つない快晴。少し遠くに太陽が見える。昼 […]
2017年2月6日 / 最終更新日時 : 2017年2月6日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 淋しいおねだり 悪魔は嘘を吐けない。 天使は微笑まない。 人間は嘘を吐いて、その魂を羽根と散らす。 *** 「のばらちゃん!」 廊下から教室に駆け込んでくる黒百合が視界に飛び込んできて、そっと眉根を寄せる。 「廊下は走らないって […]
2017年2月6日 / 最終更新日時 : 2017年2月5日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 真の名は。 ある日、二葉は授業中に居眠りし、目が覚めて慌ててノートを開くと、 「お前は誰だ」 と書かれていた。自分の筆跡ではない。……誰も何も二葉という名前だ。岐阜の飛騨の田舎で暮らす普通の女子高生。普通と少し違うのは、神社の娘 […]
2017年2月5日 / 最終更新日時 : 2017年2月4日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 私のまぶたに背信を咲かせて 咲かないさくらを育てて、十年。晩春、その子を身籠もった。 水のにおいに満ち満ちた枝を空に下げ、かの脆弱な樹いつきがどうしてもと乞こうてきたためだ。 彼の――わたしに子を願ってきたのだから、さくらは男子おのこだったの […]