2017年9月4日 / 最終更新日時 : 2017年9月4日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 獺祭だっさい なぜかはわかっていない。獺かわうそには仕留しとめた肴を川べりに並べる習性があり、人はそれを神への奉納になぞらえ獺祭だっさいと呼ぶ。 水が怖いとおもうことがなかった。海辺で育ち泳ぎは誰にも負けない。こんな浅い瀬で溺 […]
2017年9月3日 / 最終更新日時 : 2017年9月2日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 とある帝国の謝肉祭カーニバル 遥か昔、アテスカ帝国という国があったそうな。その国は強く、周りの国を次々に倒してどんどん大きくなっていったという。帝国の戦士たちは強靭であり、勇敢であり、そして戦闘狂でもあり、倒した相手を生贄として神に捧げ、己の身体に取 […]
2017年9月3日 / 最終更新日時 : 2017年9月2日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 後のまつり 「……では、単刀直入にお訊きします。犯行時刻、すなわち二〇一六年一一月二七日の午後三時四〇分頃、あなたはどこで何をしていましたか?」 「三時四〇分……ですか?」 「えぇ、間違いありません、殺害された被害者の死亡時刻 […]
2017年9月2日 / 最終更新日時 : 2017年9月1日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 デカメロン祭り 「先生ー! 茨木いばらき先生ー! 待ってくださいよー!」 二人の若い女が山の中を歩いている。胸の薄い女は軽快に進んでいくのに対し、連れの胸の大きい女はかなり遅れていた。 「遅いよ、北海きたみちゃん。そんな調子じゃ日が暮 […]
2017年9月2日 / 最終更新日時 : 2017年9月1日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 がらんどうの魔女 わたしは姿見に映る自分を見る。 人って、いちばんいい顔をするのは、鏡をのぞいているときなんだって。額から胸までまっすぐ伸びるブロンドをなでながら、でも、と思う。でも、わたしが毎晩のように鏡をのぞく理由は自分を見るため […]
2017年9月1日 / 最終更新日時 : 2017年9月1日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 夏蚕(抄) 「村の奥には神社がありました。坂の上にある、村で一番大きな神社です。 村人がその神に願うのは、魚の大漁や、海上の安全です。年に一度、八月の末。夏の終わりに村人たちは、海上に飾り立てた船を浮かべ、沖に向かって漕ぎ出します […]
2017年9月1日 / 最終更新日時 : 2017年9月1日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 飛ばない龍はただの蛇だ ほら、あそこです。 真くらい池の水面を、懐中電灯が丸く切り抜く。池はみどりいろに濁って魚も見えない。水面に浮かぶ葉も多い。身を乗り出すが、そもそもどこまでが地面かも分からなかった。 眼をこらすと、水面の奥にしろい帯 […]
2017年9月1日 / 最終更新日時 : 2017年8月31日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 消えるも深めるも 「エンニチに行ってみない?」 親友の絵梨えりが口にする聞きなれない単語に僕は首を傾げる。 「社会学の実地調査なんだけど、ちょっと遊んでいきましょうよ」 「実地調査なのに遊び?」 「そうよ瞭りょう、遊んでもいけるのよ。 […]
2017年8月31日 / 最終更新日時 : 2017年8月30日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 浜に打ち上げられた鯨の話 遠い昔に、北の方で行われていた祭りだと、先生は言った。 ベランダで煙草を吸いながら、その話を聞かせてくれた。 文化祭の前日の午後のことだ。 僕は、昼食を食べてから教室には戻らず、図書室で自習をしていた。 「みんな […]
2017年8月31日 / 最終更新日時 : 2017年8月30日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 「渡り鳥の恋」より 私の名前はマガ子。去年の夏に生まれたばかりの、マガモ一年目生殖羽♀。 越冬のためにシベリアから東京まで渡ってきて、この二月で三ヶ月目。最初は人工物ばかりの景色や人間の多さに戸惑うことが多かったけど、最近はもう慣れっこ […]