2018年4月29日 / 最終更新日時 : 2018年4月29日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 コンポステーラの墓守り人 「そろそろエルサレムに帰らなくてはな。また、海を渡ることになるのか」その宣教師は、最後に私にそう言った。 彼は遠い地中海の果て、このガリシアまでわざわざ自分の信じる神の教えを広めに来た男であるとのことだった。ただ、イ […]
2018年4月29日 / 最終更新日時 : 2018年4月28日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 ノアVSリヴァイアサン いつも通りサヴィと共に釣り糸を垂らしていると、低く嗄れた声が届いてきた。 「海は昇っていないか?」 見りゃ分かんだろ、と、パイオは欠伸して返す。魚が釣れる気配は無かった。眼前の大洋も、波音も、船の揺れも、釣りを始めて […]
2018年4月28日 / 最終更新日時 : 2018年4月27日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海を飛ぶ 決まった毎日の中に気づくとぽっかりと穴が開いている。時々目印を無視してその穴に飛び込んでしまう。僕は昔からそういう性質たちだったのだと思う。 僕はコタツの上にあったいつものカップ麺を食べた。それから玄関まで行って、も […]
2018年4月28日 / 最終更新日時 : 2018年4月27日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海底の友とわたしの女神 その日を覚えている。 空を泳いでいたら上がった水飛沫。それは海の中から突然に打ちあがった。思わず泳ぎを止めたわたしの周りに更に上がるのは海水の柱だ。 害意があるのか読めず、その場でとどまっていると暗い底から低い声が […]
2018年4月27日 / 最終更新日時 : 2018年4月26日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 海をつくる子供 僕が暮らしているのは、あたり一面、山と畑が広がる村だ。 日が昇るとともに両親やきょうだい達と畑仕事に勤め、日が暮れたら眠る日々の繰り返し。村の外に出たことはなかった。 そんな僕の唯一無二の楽しみは、時折村にやってく […]
2018年4月27日 / 最終更新日時 : 2018年4月26日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 有明に浮かぶ星 曇天の空を背景にして、波が浜辺に打ち上げられる。その波は砂や貝などを巻き込んで海に戻っていった。 繰り返されるその様子を横目で見ながら、黒色のローブを羽織り、フードを被った人間が浜辺を歩いていた。しばらく進むとその者 […]
2018年4月27日 / 最終更新日時 : 2018年4月26日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 ガラス越しの逢瀬 重たいバケツを両手に提げて、僕は海から浜に上った。海水の重みに負ける事も無く、しっかりとした足取りで木陰に敷いたビニールシートへと向かい、バケツを下ろす。 ビニールシートの上には、クーラーボックス。ただし、中に入って […]
2018年4月26日 / 最終更新日時 : 2018年4月25日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 ひとりの青 諸泉もろいずみがひとりの生徒に気がついたのは、背負っていたリュックサックをおろしたときだった。 リュックサックは、とても重かった。中身は一眼レフカメラのレンズだ。リュックサックを押しつけてきた男は、目の前に広がる砂浜 […]
2018年4月26日 / 最終更新日時 : 2018年4月25日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 終焉 綺麗な文字だった。内容はいたってシンプルだった。 “神様、助けてください” これはこれは。嘘だったらタチの悪い嘘だ。 友人たちは、そんなものは信じるもんじゃないと嗤っているけど、何故だか読む手が止まらなくて。 “殺さな […]
2018年4月26日 / 最終更新日時 : 2018年4月25日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 訳詩 思い人/とこしえ 「思い人」詠み人知らず わたしの思う、あのお方。 大海近くにいらっしゃるのよ。 あのお方には、何を贈ろう。 双ならびの珠たまのべっこう簪かんざし。 綺麗な玉ぎょくで飾られてるの。 聞けばあなたに 他心ふたごころ この贈り […]