2019年2月9日 / 最終更新日時 : 2019年2月8日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 日置 天狗の山には青花がほころぶ。 天狗の花は値千金の霊薬、花弁の油は千変万化の幻を見せ、茎や葉を煎じればあらゆる病を退け、全身に活力を巡らせる。干した根は若返りさえ叶えるとか。母様に教わったとおり、柳やなぎは天狗の山を奥 […]
2019年2月9日 / 最終更新日時 : 2019年2月8日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 アジサイは大変好ましい あるアジサイ味わい深く よくあるアジサイ山に咲く よく見りゃアジサイ空の色 こっちのアジサイ紅い色 色は変わるが同じ花 いつまで見てても飽きないね あるアジサイ味わい深く よくあるアジサイ山に咲く いつ […]
2019年2月9日 / 最終更新日時 : 2019年2月8日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 タイガーリリィ・ファントム タイガーリリィ・ファントム 強い光を感じて、わたしはのそりと目をさました。 いちめんのあお色、空だろう。 雨は遠そうだが、これだけ太陽のあたる場所はなかなかのものだ。しかし、満足しつつ下を向いてまもなく、わたしは絶 […]
2019年2月9日 / 最終更新日時 : 2019年2月8日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 本日の質入れ品、枯れ木に咲く花 どこかの街角にひっそりと存在する質屋がある。 臙脂色の扉に営業中と書かれた看板が下がっているのなら、その扉は誰にでも開かれる。一歩、店内に足を踏み入れれば、時計が静かに時を刻む音が聞こえることだろう。橙色の優しく、穏 […]
2019年2月8日 / 最終更新日時 : 2019年2月7日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 彼はきっと、薔薇の城 乾いた病葉が、土の上を何処までも覆っていた。ひび割れた花壇の間、舗装されていた小径はかつての姿を忘れて寂しい色をしていた。獰猛な蔓薔薇に石畳の亀裂を絡められながら、溝から緑が萌えることはない。 朽ちた色彩の芯に略奪者 […]
2019年2月8日 / 最終更新日時 : 2019年2月7日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 祈りの花 よく晴れた夏のある日。 空は、濃く澄んだ青がどこまでも続き、ともすれば涙が出そうになるほど眩しい。 ──母は、こんな色の目をした人だったと、かつてロズリーから聞いた。陽の光に輝く金色の髪をしていた、とも。 「私は、 […]
2019年2月8日 / 最終更新日時 : 2019年2月7日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 いざない その話をこの下宿に持ち込んできたのは我々のような文士の類いなどではなかった。国学を修める学生で、とある華族の次男坊。家督を継ぐ必要がないためか常にふらふらとしている――まあ、見た目だけならばただの軟派野郎に見える男だ。 […]
2019年2月8日 / 最終更新日時 : 2019年2月7日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 繰り返し、繰り返し 記憶と人格の結びつきについて、今日もふと考える。記憶がなくても同じ人格というのはあり得るのだろうかと。しかし、例えば人間は、一ヶ月前の食事を聞かれて思い出すことは難しいという。初めての口づけの場所は覚えていても、数年前 […]
2019年2月7日 / 最終更新日時 : 2019年2月6日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 鉄花 南部戦闘区域の植物園には掘り出し物が多いと、ゴミ回収業者の間では前々から噂されていた。実際に足を運んでみると、崩れ落ちた建物と、抑制を失って繁茂する木々の合間に、ロボット兵士の残骸が何体も寝転んでいた。 「このあたりは […]
2019年2月7日 / 最終更新日時 : 2019年2月6日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 ノーリーズン 二〇〇X年九月初旬。 残暑厳しい東京郊外のある大学病院に奇妙な患者が入院した。 「ほら、あれよ」 病室の前で看護師たちがささやいた。その声は三人部屋の中にも当然聞こえていて、廊下側のベッドに横たわる老人がわざとらし […]