2019年2月7日 / 最終更新日時 : 2019年2月6日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 バラの花束 三十歳の誕生日は何か特別なものになると信じていた。 現実は、彼との無言のしゃぶしゃぶだった。何回目かのデートで見つけた黒豚のしゃぶしゃぶの店だった。肉は甘みがあってとても美味しいのに、私たちは終始、無言だった。ゆず胡椒 […]
2019年2月7日 / 最終更新日時 : 2019年2月6日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 宝石と野花 布張りの小さな箱の中には、親指の先ほどの大きさの石が鎮座している。透き通る水の色の中に紫の筋が走り、窓から差し込む陽光を受けてその色彩は様々に移り変わった。黎明の空のような色にも、森の奥深くの泉のようにも見える輝きは、 […]
2019年2月6日 / 最終更新日時 : 2019年2月5日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 不香の花ふきょうのはな 舞い降りし 不香ふきょうの花 真っ白になりしあなたに 供えしか 永久とわの長い旅路の前に あなたの呼吸は 穏やかとなりて 一切の柵しがらみを離れる まぶたに手を置き そっと閉じ 手を取れば まだあたたかく […]
2019年2月6日 / 最終更新日時 : 2019年2月5日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花と罰 花と罰 つい昨日生けたばかりの薔薇が、早々に生気を失い、厚い花弁が重いのか、ぐったりとけだるげに俯いている。ラッセルが空調を効かせすぎるせいだと、男はぼんやり思っていた。 多少萎びているくらいが、死を待つこの部屋には […]
2019年2月6日 / 最終更新日時 : 2019年2月5日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 東風吹かば とある所に、名も知られぬ小さな島がある。 季節が巡る度、名を知られぬ花々が咲き誇る、島がある。 なぜ、その島に花々が咲くのか、今となっては知る者も語る者もいない。 その日、藤井幸子が帰宅したのは、遅い春の日が落ち […]
2019年2月5日 / 最終更新日時 : 2019年2月5日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 サン 白い砂浜の波打ち際に、女の子が横たわっていた。波にのまれたらすぐに流れてしまいそうな、小柄な女の子だった。島で暮らす老体の男は、死体が流れ着いたとまず思った。満ち潮へ向けて迫り来る波に、その小さな身体をそっと流そうとし […]
2019年2月5日 / 最終更新日時 : 2019年2月5日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花売り娘と薔薇の少女 「お、お花は、いり、ませんか……。」 か細い声で往来に声をかける、その女の子は震えていました。女の子は裸足で、服も、ボロ切れの雑巾のような布一枚でしたけれども、女の子が震えていたのは、寒さだけが理由ではありませんでした […]
2019年2月5日 / 最終更新日時 : 2019年2月4日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 永遠(とわ)に続く愛をあなたに ボクには好きな女の子がいる。 彼女は昼休みや放課後になるといつも校庭の隅にある小さな庭で花の手入れをしている。彼女は園芸部に所属しているのだ。部といっても、部員は彼女一人だけ。彼女の丁寧な手入れのおかげで、庭にはいつ […]
2019年2月4日 / 最終更新日時 : 2019年2月3日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 中庭で花は咲かない 四方を硝子窓に囲まれた中庭で咲く桜は、箱庭に据えられた作りもののように見える。 四角く刳り抜かれた空の下、聴色ゆるしいろの花が惜しげもなく咲き溢れるこの季節だけは、小児病棟に面した中庭へ足を運ぶ人々の数と平均年齢がぐ […]
2019年2月4日 / 最終更新日時 : 2019年2月3日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 はらわたの六花 『先生』カーム・リーワードの行動は、担当のネイト・ソレイルからすればいつも突然で。 今日も原稿をほっぽりだして、どこに行くのかと思えば「墓参り」なんて嘯くのです。今まで先生が誰かの墓参りに出かけたことなど一度もなかった […]