2020年10月16日 / 最終更新日時 : 2020年10月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙は音を鳴らさない 古い、二階建てのアパートだ。 奥まった裏通りの隅に建ち、築三十年程は経つらしかった。十年前に一度リフォームが入ったらしく、立て付けが悪いような印象はない。一応1DKと言える筈の居宅には、小型のエアコンも取り付けられてい […]
2020年10月15日 / 最終更新日時 : 2020年10月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 真珠 手紙というものがある。便箋に文を書き、宛先を書いた封筒に入れ、切手を貼ってポストに投函するあれだ。 ここに一通の手紙がある。封筒には宛先がなく、便箋にも宛名はない。切手を貼られてもいない。 森の廃屋で見つかったそれは、 […]
2020年10月15日 / 最終更新日時 : 2020年10月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 人外青年のラブレター代筆大作戦 「テツオさん、ラブレターの代筆をしてくださいませんか?」「は?」 仕事帰りの俺を無理やりサ店に連れてきておいて笑顔で何言ってやがんだコイツ。「なんで俺がそんなことしなきゃならねーんだよ。自分でやれや」「僕、まだ人間界の手 […]
2020年10月15日 / 最終更新日時 : 2020年10月14日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 舐める家 少女のような家、というのが徳さんの表現だったが、話をよく聞いてみるとただのいわく付き物件だった。 機嫌を損ねるとお湯が出なくなる。機嫌がいいときに有精卵をもらってきたら、次の日には枕元にひよこがピヨピヨしていた。 そん […]
2020年10月14日 / 最終更新日時 : 2020年10月13日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 セーフとアウト ーー返事はいりません。 電話を無視しつづけた結果、姉は手紙を寄越した。 真面目な性格を表すように、丁寧に文字は並んでいた。見知った姉の文字を目で追って、そっと封筒に仕舞い直した。元から返事をするつもりはなかった。 ー […]
2020年10月14日 / 最終更新日時 : 2020年10月13日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 美しい朝より「手紙」 宇宙軍総裁殿下におかれましては、ご健勝のこととお喜び申し上げます。この世界に落ち着いて、何年経っても私は子供の姿のまま、過ごしてまいりました。大人の姿になる夢をずっと見続けておりました。いつか、きっと健全な身体を得て、仲 […]
2020年10月14日 / 最終更新日時 : 2020年10月13日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 桃膠 姉が鬼籍に入ったので、桃の樹の根本に埋めることになった。 この地域の古い慣わしに従う形だ。うちはそんなに由緒のある家柄でも無いのに、と最初は近所に恥ずかしいような気がしたが、姉さんをきちんと弔ってやらなぁ、と語尾を湿らせ […]
2020年10月13日 / 最終更新日時 : 2020年10月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙 あなたは手紙 生まれたときからたったひとりの誰かに宛てられた手紙 行く宛は今は雨にでも降られたか少し滲んでて見えないけど確かに書いてあった届けば大切に読んでもらえるあなた 行く宛は読めないから少しずつ迷ったりする ふいに […]
2020年10月13日 / 最終更新日時 : 2020年10月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙未満の 「落ちましたよ、」 はらはらと音も立てずに枯葉か何かのように舞い落ちたメモ書きを前に、即座にその場にしゃがみこむようにして拾い上げられる。「ああ、ありがとう。わざわざ」 椅子に座ったままぎこちないお辞儀で答えれば、しなや […]
2020年10月13日 / 最終更新日時 : 2020年10月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ことの葉 「終わったみたいだね」 風に乗って聞こえてくる話し声に、春光ハルアキは立ち上がって尻をはたいた。隣に座っていた少年もぴょんと立ち上がり、緑色のポンチョをひるがえしながら飛びあがると、楠の枝にストンと腰をかけた。新緑の香り […]