2020年10月12日 / 最終更新日時 : 2020年10月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 拝啓、沈める都の海の魔女へ むかしこの海にはそれはそれは美しい翠の国があって、一夜にして海嘯の底へ沈んだ。 そんなことを語りながら、先生はたびたび瓶入りの手紙を浜から海へと流した。或いは船で漕ぎ出した洋上から、はたまた飛沫の散る崖の上から、何度も […]
2020年10月12日 / 最終更新日時 : 2020年10月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 七竈 春だ。 長く冷厳に続いた極夜も終わり、目に見えて雪融けが進む。時化で唸ってばかりいた海は凪ぎ、風が緩む。朝晩ことに耳と鼻と指先を痛ませたきつい冷えこみもほどけ、久々に息が白くない毎日が日常となり始める。もう間もなく、南 […]
2020年10月12日 / 最終更新日時 : 2020年10月11日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 おいしいパスタ屋さんのある街 私がこのお店を訪れたのは、学校内でおいしいパスタを出しているお店があると噂になっていたからでした。 あの時の緊張感は、今でも覚えています。 店構えはとても趣きのある、年季を感じるものでしたから。 高校生の私は、そういう […]
2020年10月11日 / 最終更新日時 : 2020年10月10日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 朋有り遠縁より来たる 「……小惑星衝突、という未曾有の危機に月や火星等の太陽系惑星衛星への入植からあぶれた地球人は、系外惑星への移民計画に一筋の光を見いだしたのです。そして……」 図書館のアーカイブで調べた、地球からこの星、14光年離れたカナ […]
2020年10月11日 / 最終更新日時 : 2020年10月10日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 悪魔の女王はサンタになりたい メフィスト・フェレスは悩んでいた。【鉄の女王】として軍勢を率い、数多の強者を血に沈めた最上級悪魔。 しかし彼女は、軍勢所属の子どもたちからすれば保護者でもある。 現在、3人の保護対象と同居している。 これは家庭を持った […]
2020年10月10日 / 最終更新日時 : 2020年10月9日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 お手紙書いてね 「一生のお願い! 私の代わりに感想のお手紙を書いて欲しいの!」 そう言って幼馴染に頭をさげると、「一生のお願い、まだ残ってたんだな」 冷ややかな声が返ってきた。う、いや、まあ、乱発してる自覚はあるけど。しょうがないじゃん […]
2020年10月10日 / 最終更新日時 : 2020年10月9日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 私のおばあちゃん おばあちゃんが死んだのは、四月に入ってすぐのことだった。 私は、おばあちゃんにおんぶにだっこで、おばあちゃんが死ぬまで、おばあちゃんの世話だけをして、生きてきた。「私の世話をして、家に居るんでございますよ」 おばあちゃ […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 行方知れずの手紙に溺れて しどけない倦怠を、はためかせた黒絹のガウンに含みながら纏っていた。はだけた肩を直すには、物憂さがすぎた夜が落ちてきている。湯浴みの残り香は、麗人を魔物めいて匂い立たせる妖艶に気怠い空気を添えていた。麗人は真っ直ぐ机に向 […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 木の葉の小舟 ──あいたいです── つたない文字でそうしたため、幼い少年は短いだが心を込めた手紙を木の葉を組み合わせた舟に乗せた。そしてそっと舟を川の流れに委ねる。 葉っぱの小さな舟は彼の切実な願いを記した手紙を乗せて、せせらぎと共 […]
2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 双花&ばけのあわあわアワー!~不思議編~ 『風の噂に聞いたんですけど…』何日目かの車中泊の夜、同乗者を寝かしつけて自分も目を閉じたら、突然知らない声が車内に響いた。驚いて振り向くと、後ろの荷台に積んでいた非常用ラジオがいつの間にか起動し、どこかの番組を流していた […]