2021年2月8日 / 最終更新日時 : 2021年2月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ジェミナイの山鳩 雨が降っている。霧のようにしっとりと湿った、柔らかい雨だ。 霧雨にけぶる緑の山を見上げていたヒューイが背負子しょいこを担いだ。中型の弓を肩に掛け、両腰に吊った鞘の金具を確かめてからふたたび顔を上げる。 細く白いおもてに […]
2021年2月5日 / 最終更新日時 : 2021年2月4日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 それはそのまま愛の証だ 自室の片付けをしていると、机の引き出しから大量の手紙が出てきた。「こんなにあったんだ」 差出人はいろいろだけど、その半分以上は同じ人からだ。『坂下鈴音さかしたすずね様へ 奥村鈴子おくむらりんこより』 彼女と手紙のやりと […]
2021年2月4日 / 最終更新日時 : 2021年2月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙のはなし その街は印象を灰色としていた。 透きとおっているわけでもなく、ぼやけているわけでもない。透明度がひどく高く、彩度だけがひどく低い。そんな灰色が、晴れていても曇っていても、その街を覆っていた。街にとって、海は近しい位置に […]
2021年2月3日 / 最終更新日時 : 2021年2月2日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 恋文 お久しぶりです、元気ですか? 俺はなんとかやってます。 ベルリンは雨が続いています。今日で三日目です。 今、調べたら、横浜は晴れていますね。 春らしく、寒くもなく暑くもなさそうで、うらやましいです。 こっちは春とは思え […]
2021年2月2日 / 最終更新日時 : 2021年2月15日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 辺境から、愛を込めて娘より 遠く離れた地に住まう母、アデールに手紙を書く。「えーっと……かあさ……いや、アデール様、ロンです。お元気ですか。あたしはなんとかやってます」 何故このような手紙を書いているのか。それはあたし、ロンことヴェロニクが、この […]
2021年2月1日 / 最終更新日時 : 2021年2月1日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 父から息子へ、息子から父へ 『眞澄ますみ 元気にしているか。眞澄が本家の養子になったとき、これからは簡単に会えなくなるだろうと予想はしていたけれど、これは想像以上だと、こうして手紙を書いている。せめて父さんも夢を渡れれば、眞澄と蓮れんの側にいてやれ […]
2020年12月24日 / 最終更新日時 : 2020年12月23日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 満月の消印 お元気ですか!しおりありがとう!! とてもかわいい。大事にします。最近読み始めた本にさっそく挟みました。冬がどんどん近づいてきてるので、支度にみんな大忙しです。そうじゃなくてもうちは騒がしいんだけど! 今年の冬は向こうと […]
2020年12月24日 / 最終更新日時 : 2020年12月23日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 タトラの山の義賊と牛飼い ブナの木々の梢が風に揺れ、鴉が空高く舞い上がった。 針葉樹に覆われたタトラの山深く。切り立った岩場の上、肩を覆う短いマントをはためかせながら、ユライ・ヤーノシークは立っている。歳は二十歳を過ぎたばかり。少年の面影を残す […]
2020年12月24日 / 最終更新日時 : 2020年12月23日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 5歳長女と3歳次女、手紙を書く ある日、幼稚園からの連絡帳に、小さな白い紙袋が挟まっていました。中にははがきが一枚。友情の絵はがき。裏を見れば、手紙を書く面の上半分にはカラフルな絵が描かれています。絵のタイトルは「みんなで夜のピクニック」。恩田陸の「 […]
2020年12月24日 / 最終更新日時 : 2020年12月23日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 海に手紙を出すならば わたしがあの人の音楽を弾くようになって、それなりが経った。 うまくなった気はしない。よいものかもわからない。ただ手応えのないまま闇雲にめったやたらに続け続けて。 「月にむかってどこまでも飛ぶ虫みたいだな」 いつも、そ […]