2016年9月10日 / 最終更新日時 : 2016年9月10日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 かわいいひと 自分の家で眠れなくなったのはいつの頃からだろう。学生の頃は、いつまでも深く眠っていられたのに、十年経った今、僕は、眠ることが苦痛でしかない。 浅い眠りは悪夢を見せる。毒を飲まされる夢。正確には、毒を飲まされるすんでのとこ […]
2016年9月9日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 榛名神社参詣 地上の夏など知らぬ顔 霊山の参道は しっとりした空気に満たされている 森と川を眺めながら歩く道 神に近づくほどに 息は上がるけれど 全身を駆け巡る喜びは 代えがたい力によるものか せせらぎの音が 耳に優しい 木漏れ日もど […]
2016年9月9日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 梅酒のロックはぬるいのしか飲んだことがない 駅から徒歩十二分。 お世辞にも駅近とは言えない場所にある和食居酒屋に向かって歩く男女が一組。空色のワンピースを着た小柄な女子と、細身でシンプルな装いの男性。傍からはカップルにしか見えないが、この二人にそういう感情はな […]
2016年9月9日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 箱庭で死ぬの 母の趣味は足し算だ。 とにかく足すことが好きで、1+2+3+……と順に足していったり、ある数とある数を足して次の日はそこから一桁取り除いた数を足してということを繰り返していったり。とにかく人生の時間のほとんどを、ただ […]
2016年9月9日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 橙から群青 『ねぇ、明石くん。私の影を好きになっちゃ駄目だよ』 そう言い残した数日後、彼女である千月が失踪した。 両親には「しばらく旅行に出かけてくる」と伝えていたそうなので、旅行先で事件に巻き込まれた可能性があった。けれど、部 […]
2016年9月8日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 お花見場所取り合戦 沿道二キロに続く桜並木が開花を迎えると、人々は浮き足立つ。それはこの市庁舎でも同じだった。春、市職員たちは十二時の鐘が鳴るとテラスを目指す。そのテラスは沿道に面しているため昼休憩中に花見が出来るからだ。もちろん一般市民 […]
2016年9月8日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 あんこの幸せ 「私はねぇ。水まんじゅうのあんこになりたい」 チヨは時折そんな風に、唐突に言いだす。カヨはいつも「ふぅん」と相槌を打ってから、「え、なんだって?」と聞き返す。 「暑い日にさ、どこか涼しい所はないかな、でもクーラーの風は嫌 […]
2016年9月8日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 旅行の頃 ちゃんと自分で準備するからと駄々をこねる由夏ゆかに、約束だぞ、と渋々俺のベッドで一緒に寝たにもかかわらず、起きたらやっぱり準備はできていない朝。案の定、手伝うハメになり、急いで最寄駅に行くも、電車の出発時刻に間に合わず […]
2016年9月8日 / 最終更新日時 : 2016年9月8日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 平和の鳥 とある世界のお話。長らく続いていた平和が崩れ、世界中が戦争を始めた。 各国の指導者たちは皆、正義は我々にあると叫んで国民に喧伝するが、延々と続く世の乱れに人々は疲弊し厭戦の雰囲気が流れるも、互いに引くに引けない泥沼の状 […]
2016年9月7日 / 最終更新日時 : 2016年9月6日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 捧げる祈りは 物事が本来とは異なる珍しいかたちで現れること、それはその国では吉兆とされた。珍しい白い亀が献上され、元号が変わることもあったと残されている。 左大臣家の血を継ぐ皇子は目を覚ますと視界の端になにやら動くものを捉えた。咄 […]