2020年12月9日 / 最終更新日時 : 2020年12月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 真夜中のラブレター おかえりなさい、お仕事お疲れさま。冷蔵庫にミネストローネととりももの焼いたやつがあるからあっためて食べてください。ご飯とパンが冷凍庫にあるよ。遅くなりそうだから先に寝てていいからね。俺もがんばるね。いつもありがとう。 忍 […]
2020年12月9日 / 最終更新日時 : 2020年12月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 渡貫とたつき たたさたったたぱたりたたたわたかたらたたん たきたょうたたたいたくた 縁側に座った渡貫わたぬきは、湯呑みの茶とともにため息を飲み下した。隣に置いた茶請け――本日は草餅――には手をつけず、再び文面と向き合う。 今しがた […]
2020年12月9日 / 最終更新日時 : 2020年12月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 言吐き病と手紙士の話 西暦2045年、世界中に蔓延した奇病はこの国の在り方を変えていく。 いくつもいくつものこと、医療や、経済や、産業や、文化とか、高校生の私たちにはまだまだ解らない変革がたくさん起きていて、だけどあと5年もすれば私たちも大学 […]
2020年12月9日 / 最終更新日時 : 2020年12月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ボトルメール 目を開ける前の事は、何一つ覚えていなかった。 自分が一体何者だったのか、なぜこの場所に居るのかすらも分からなくて。 無機質な白い部屋の中でベッドから身を起こせば、知らない声が投げられた。「お目覚めかい?」 芝居がかった […]
2020年12月8日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 魔法少女(成人男性)の息子(成人男性) 『愛する悠斗へ おまえがこの手紙を読むころには、お父さんはもうこの世にいないだろう』 そんな茶番じみた文句で始まる手紙が届いたのは、ちょうど親父の一周忌の翌日だった。 『お父さんには、おまえにもお母さんにも打ち明けられ […]
2020年12月8日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 郵便配達員との騒がしい一日 うとうとしていた昼下がりにドアチャイムが鳴って、ぼんやりした頭のまま何も考えずにドアを開く。「……げ、病葉」「げ、とはひどいですよぅ照子さん!」 目の覚めるような真っピンクの髪と揺れる黒いお下げ髪が視界に入って反射的に […]
2020年12月8日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 喪中はがき 毎年、欠かさずに年賀状を出し続けていた元彼から、初めて返信のはがきがあった。ただしそれは――喪中はがきだったが。「死んだんだ」 同じ年だった彼が、どうして四十五歳なんて若さで死んだのかなんてわからない。喪中はがきには定 […]
2020年12月8日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 はなたばのてがみ 呼び鈴が鳴った。「ママーッ、おとなりのおにーちゃん!」 同時に、庭から駆けてきた幼い娘のよく通る声が、静かな昼下がりに響く。わたしは洗い物の手を止めて玄関へと急いだ。 扉を開けると、娘はわたしの服の裾にぴたりと取りつい […]
2020年12月7日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 官渡に或った気がかりな文 【官渡の戦い(かんとのたたかい)】 中国後漢末期の200年に官渡(現在の河南省鄭州市中牟県北東)において曹操と袁紹との間で行われた戦いである。赤壁の戦い・夷陵の戦いと共に『三国志』の時代の流れを決定付ける重要な戦いと見做 […]
2020年12月7日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 1番欲しいもの 体操の合間に見上げる空は、今日も綺麗な青い空だ。 天気のいい、時間のある時は極力、塀の外が見える場所に行くようにもしている。 ここはとある県の女子刑務所。 刑が確定してから入るので、服装も食べるものも時間も、何もか […]