2020年12月7日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 花と短歌の百合物語 【序幕】 恋文こいぶみを文通と知りにじむ紙撫子なでしこの花はな押おして返した 貴女あなたへと伝えるためにローファーを履はいて叫さけんだ「好きと言ってよ!」 コリウスを照らす炎ほのおを隠かくしたの郵便受けに鍵かぎを残して […]
2020年12月7日 / 最終更新日時 : 2020年12月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 御欠席 * To Haruko Musashi ハルちゃーん、元気? アキホだよ! あーっ、なんかすごい緊張しちゃう。なに話すんだっけ。 えっと……東京は連休明けから40℃近い日がつづいてるそうですね。こっちはまだ35℃くら […]
2020年12月6日 / 最終更新日時 : 2020年12月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 爆速でメッセージをよこす彼 Ω:あいつら時間を守らないΩ:あと30分は拘束されそうΩ:むかつくΩ:ところで妹とは会えた? 学校に残る友人から連続でショートメッセージが届く。日頃から返事が速い彼だが、今日は爆速だ。Ω:君のことは連絡済みだからΩ:普通 […]
2020年12月6日 / 最終更新日時 : 2020年12月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 猫も手紙に浪漫を感ず 最近、大学付近にある公園の砂場で、大きな猫の足跡のようなものを見かける。ぺったりと押し当てられているそれは、不規則に並んでいるようでもあり規則的でもあるようでもある。なんだろうなあと思ってじっと見ていたら、友達にこうい […]
2020年12月6日 / 最終更新日時 : 2020年12月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 裏技 レンから葉書が届いた。 繊細なタッチで描かれた風景画に、「宿帳にこの宛名の住所と、タナの名前を書きます」 と短く添えてあった。 よし、裏技成功。 本名を知られることは回避できた。 住所は正しいが、宛名として書かれている […]
2020年12月5日 / 最終更新日時 : 2020年12月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 波が来たりて 私の故郷は坂の多い海辺の街だった。 夏になると海水浴場に観光客が押し寄せて来て、海の家を開いていた母方の叔父さんは、夏になると上機嫌になり、毎年私にプレゼントをくれた。最後にもらったのは、白地に赤い水玉模様のワンピース […]
2020年12月5日 / 最終更新日時 : 2020年12月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 LetterFrom平壌 1980年代中期― 飛行機を降りた彼は出迎えの民族服を着た少女から花束を受け取った。「初の海外旅行が北朝鮮とは我ながらディープだな」 彼は心の中でこう呟きながら苦笑した。「皆さん、まず写真撮影をします」 この旅行団の団 […]
2020年12月5日 / 最終更新日時 : 2020年12月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ラブレター 「はじめまして。私は、あなた方に我々の文明を伝えるために、[地球]と呼ばれる遙か遠い惑星からやってきた者です」 研究者たちに[手紙]と名付けられたその少年は語る。[手紙]は辺りの反応を伺うように、しばしの間沈黙した。答え […]
2020年12月4日 / 最終更新日時 : 2020年12月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ごようじなあに ごようじなあに ポストに投函された定型郵便物は、集配を担当する郵便局で仕分け機にかける。超高速のベルトコンベアーによって運ばれ、その途中でスキャナが郵便番号を読み取って、同じ番号のものが同じ位置に集まるように分別される […]
2020年12月4日 / 最終更新日時 : 2020年12月3日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 カフェー・ヴァルゴのスピカ 青年は小さな円卓に唯一のせられた硝子の灰皿を撫でてみた。呼び鈴を鳴らせばせかせかと女給が顔を出す。 オークだかマホガニーだか、兎に角レトロなほの暗さに、ぱたりと押し退けるだけの木彫りの扉が揺れていた。その奥には洋酒瓶の […]