2020年10月8日 / 最終更新日時 : 2020年10月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 残暑お見舞い申し上げます 暑い日差しが降り注ぐ夏の日。近所のスーパーに買い物に行った帰り、ポストの中を見てみると手紙が入っていた。ダイレクトメールとか、そういった類いの物ではない。封筒の柄を見て、差出人を見る前から大体誰からのものなのか察しが付 […]
2020年10月8日 / 最終更新日時 : 2020年10月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 クラリッサの部屋 「おや、これは壮観だね」 病室に一歩足を踏み入れたアニタ・シェイクスピアは目を見張って声を上げる。 白を基調とした部屋の壁には、何枚もの絵が貼り付けられていて、その色鮮やかさに圧倒されたのだった。「博士。お久しぶりです」 […]
2020年10月8日 / 最終更新日時 : 2020年10月7日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 僕の最愛の従者へ 悪魔に襲われたあの日、幼い君は声を失った。 村を失い、家族を失い、その上、自身の命を失いかけた恐怖がどれだけのものだったのか、僕には想像することしか出来ない。 僕が君の命を助けることができたのは、ひとつの奇跡だ。 あの […]
2020年10月7日 / 最終更新日時 : 2020年10月6日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 渡らなかった手紙 エステル様 貴女がこの手紙を読んでいるという事は、私は何らかの理由で、貴女のおそばにいないのでしょう。 そしてこの手紙を、貴女自身が見つけられたか、他の誰かが見出したかで、貴女の手にあるのでしょう。 私が貴女のもとに […]
2020年10月7日 / 最終更新日時 : 2020年10月6日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 したためる想い 私はしがない小説書きでございます。未だこれといった代表作もなく、売り上げもぱっとせず、出版社にも家計にもまるで貢献できていません。しかし他に取り柄もないものですから、書くしかないのです。困ったときの拠り所もないものです […]
2020年10月7日 / 最終更新日時 : 2020年10月6日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 手紙のかきかた 女王国の首都は、故郷の村よりも風の通りが少しだけ悪いような、そんな気がします。 背の高い建物といえば村の中心にあった教会くらい。霧明かりの向こうにそびえる山々に囲まれての暮らししか知らなかったわたしでしたから、少しばか […]
2020年10月6日 / 最終更新日時 : 2020年10月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ダイレクトメールをまとめて燃えるゴミに出す 野村秋子のむらときことは、先日まで同棲していた女性の名前だった。 大学時代から六年間。長く連れ添っていた。別れるときにはお互いに泣きも騒ぎもしなかった。合鍵を僕に渡した彼女が玄関のドアノブを捻り外に出るまで、よく晴れた […]
2020年10月6日 / 最終更新日時 : 2020年10月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 兄へ 昼はまだまだ暑いですが、朝晩と過ごしやすい日が増えてきました。△△様、お元気にされていますか。 貴方が家を出てもうそろそろ五年になりますから、ふと思い立ってこうして筆をとっています。 私の方では夏休みが終わって少し経ち […]
2020年10月6日 / 最終更新日時 : 2020年10月5日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ボトルメール 歌を始めたきっかけは、君が「よく通る声だからボーカルとか向いてると思う」と言ったからだ。ベースを始めたのは、君が「きっとベースが似合うよ」と言ったからだ。本当はどうだったのかわからない。もしかしたらドラムの方が向いてい […]
2020年10月5日 / 最終更新日時 : 2020年10月4日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 ビューティフル・ワールド 最終章 ウツクシキコノセカイ 最終節 beautiful morning with you 「きれいだ」 おもわずそうつぶやいた。「そんなこと、言わないでよ」 彼女は面食らったらしい。ぼくの身体の半分くらいしかない、華奢で小柄だったひとのそれはもう存在しない。目の前にいる漆黒の巨大な竜が、彼女のほんとうのすがた […]