2018年5月20日 / 最終更新日時 : 2018年5月19日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 その先にあるもの 潮の香り。静かな波の音。鳶の鳴き声。 全てが珍しいものだった。 軟らかな砂をゆっくりと踏みしめ、穏やかな風を受ける。 まだ海の水は冷たいこの時期、人はほとんどおらず散歩している人がちらほら。 同じように静かな時 […]
2018年5月20日 / 最終更新日時 : 2018年5月19日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 陽炎立つ 「なー、ちょっと教えてほしーんだけど」 ぞんざいに呼ばれ、頬が引きつった。 それが人に教えを乞う態度か。苦言をすんでのところで飲み込んで、リフィジはペンを握る指を解く。彼はこちらの心の安寧を乱し、嵐を投げ込むことにか […]
2018年5月19日 / 最終更新日時 : 2018年5月18日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 Color glass 広い屋敷を駆け抜ける。曲がり角、太い柱、階段の上。少しでも黒い銃口が見えたら弾道を避ける。想定より大人数だが、問題ない。前を駆ける男――エイベルが、的確に相手を潰している。前方・側方の敵はもちろん、後方の敵を見ずに撃っ […]
2018年5月19日 / 最終更新日時 : 2018年5月18日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 物語はここからはじまるのである 春とか、秋とか、暑くもなく寒くもない、いわゆるはざまの季節はなぜかなかなか衣服がセールにならない。 タグについている値札、一万五千円、予算を大幅にオーバーしているかわいいチェック柄、揺れるミニスカート、ふくらむパフス […]
2018年5月18日 / 最終更新日時 : 2018年5月17日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 水曜日、僕たちのウォータークラス 瓶を割った不注意が、天変地異を生むなんて、誰が想像しただろう。 教室は物で溢れている。僕のクラスでは、追い掛けっこやボール遊びで花瓶や地球儀を壊し、「校長に見つからないように直しとけ」と担任から隠ぺい工作を指示される […]
2018年5月18日 / 最終更新日時 : 2018年5月17日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 彼女はクジラにはなれない 海に潜るクジラを見たことがあるだろうか。 直接でも映像でも絵画でもなんでもいい、潜るクジラをイメージしてほしいのだ。水面に頭だけ出して呼吸をして、そして潜る。島にも見える大きな生き物が転じ動くその姿に感嘆を覚えた人も […]
2018年5月18日 / 最終更新日時 : 2018年5月17日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 BAR NAGOMI ~ビーチバー・カクテル~ 雲一つない、ブルーハワイのような真夏の青空。真っ白な砂浜を照らす太陽。海の日を海水浴で楽しむ男女の群。 「姫香、やっぱり私にはこんな格好……」 「なーに言ってんのさ、和水さん! ほらほら、そこの男もあそこの男もみんな和 […]
2018年5月17日 / 最終更新日時 : 2018年5月16日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 うしお通信 『助けて』 たったの一言。たったの三文字。 弱々しい筆圧の鉛筆で書かれたその言葉が、男の頭の中に激しく反響した。 「――っぷ、あははは!」 狂ったような抱腹絶倒の笑い声が、空を突き抜けんばかりに響き渡った。だがその […]
2018年5月17日 / 最終更新日時 : 2018年5月16日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 機械眼 箱舟とは経典の逸話に因んだ呼称だが、実際は地球中に築かれた広大な地下居住地を指した。箱舟には陽光も、天井のない空間もなかった。果てしなく壁と岩盤と剥き出しの土と階段の続く、出口のない迷路だった。人類は総体的に弱視化が進 […]
2018年5月17日 / 最終更新日時 : 2018年5月15日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 霧惑海峡の幽霊船 霧惑海峡における怪奇現象は、霧航士ミストノートアーサー・パーシングも当然聞き及んでいた。 かつては激戦区であった女王国と帝国の間に位置するかの海峡は、カルト教団『原書教団オリジナル・スクリプチャ』の全世界に及ぶテロを […]