夜来香 中国短編小説集 一より「口琴」(2)


民国期の中国大陸。横暴極める日本人の振る舞いに憎悪の念を抱きつつも、北平(現・北京)で起こる激しい抗日運動の行く末に不安を感じた丁安遠は、その争いから身を遠ざけるようにして漢口へと移り住む。帽子屋の家に間借りした彼は、そこで毎朝、隣家から口琴(ハーモニカ)の奏でる音色を耳にするようになったが、しかし、その口琴の音色には、いつも曲の途中で演奏が終わってしまうという特徴があった。しかも、その口琴を奏でる者について、漢口の住民は誰もが無視を決め込んでいる。やがて安遠は、周りの住民から遠ざけられている口琴の主と接触する。その主は、上品な雰囲気をたたえた女性だった…。

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 夜来香 中国短編小説集一(1)

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碧空尽 中国短編小説集三


 「龍の髭」を主宰する春秋梅菊さんによる古今の中国の王朝を舞台にした短編集の第三弾。
 日中戦争下、己のアイデンティティに揺れる日本人を主人公に描いた「祖と、故と」と、明代を舞台に個性豊かな武芸者が活躍する武侠小説『情に溺るるを知れば」の二作を収録。

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円明園 中国短編小説集二


 「龍の髭」主宰の春秋梅菊さんによる古今の中国の王朝を舞台にした短編集の第二弾。
 文化大革命の狂乱の中にある民衆の姿を描いた「壇上の悪意」、唐代の長安を舞台に詩作を巡るドタバタ劇「他人に詩を見せることなかれ」、明の遺臣が紡ぐ滅亡と再起への独白「遺民記」の三作を収録。

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夜来香 中国短編小説集一(1)


 中国を舞台にした歴史短編集。それぞれ清代・元代・民国時代に舞台を設定した三作を収録。
 古典的な志怪小説のセオリーを踏みつつ、素朴な民話世界を展開する「変わりっ狐」。さながら芥川のような、柔らかで長閑な展開なのにどこか残酷な「小さい煩妹」。戦前の郷愁と悲恋を描いた王道短編「口琴」。

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